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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第3章

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第057話 水を得た海獣

 人魚のような姿・海獣(スティーレ)()様相(マリーナ)。ついにマリン・レヴィアは真の姿を現した。


「感謝するわぁ。生意気にもアンタたちもたっくさん水を出してくれたおかげでぇ……この姿を存分に活かせるわぁ♪」


 ――ザブンッ!


 プールのようになった会場で、水を得た魚のように生き生きとするマリン・レヴィア。縦横無尽に水中を泳ぎ回っている。


『くそっ、水魔法で対抗したのが裏目に出たか!』


 確かに今の状況だけ見ればその通りだと思う。だけど。


「でも、水魔法だったからこそ、みんなを避難させることができたと思います」

『舞桜……。ああ、その通りだな』


 たとえ今がピンチだとしても、みんなの命には代えられない。その事実は変わらない。


 ――ザバーンッ!


「キャハハ♪ いつまでそんなこと言ってられるかしら?」


 水から飛び出し、笑うマリン・レヴィア。その余裕にはちゃんと裏付けがあった。


「今この会場は水だらけ。つまり新たに水を呼び出さなくても、ここから使えばいいだけ。これだけあれば使いたい放題よん♪」


 言い終えると同時に放たれる龍鱗(テンペスタ・)(ディ)氷嵐(・スカーリエ)。何度も皮膚を切り裂かれた氷の刃がまた襲いかかる。


『……フン。観客たちを巻き込む心配がなくなった今、遠慮は要らんぞ』

「ええ、わかっています……!」


 ステージの床に触れる。会場全体が揺れ、岩の壁が迫り上がる。競り上がった岩の壁はドーム状になり、レヴィアの氷の刃を防ぐための盾と化す。


「キャハハ! そんな盾じゃエビの殻ほども役に立たないってーの!」


 私の防御を嘲笑うような声が響く。彼女の自信は決して過剰ではなく、岩の盾をスパスパと切り裂いていく。まるで豆腐のように。

 バラバラになる岩の盾。そのまま崩れ、無駄な足掻きに終わってしまった。


「ぐっ……」


 蒸発させても駄目。硬い壁で防ごうにも簡単に切り裂かれてしまう。一体どうやって対処したら……


『……仕方がない。舞桜、力を燃やせ! 燃え盛る炎を身に纏って防ぐんだ!』

『炎を? でも……』


 炎で溶かしても、蒸発させても。レヴィアは水の三態変化を自在に操ってくる。それは先ほど経験済みだ。


『常に燃やし続けろ。そうすれば龍鱗の氷嵐は防げるはずだ』

『でも、それって消耗が激しくなるんじゃ……』

『ああ。だから私の魔力も使え』

『!!』


 私の霊力だけでなく、ルーシーさんの魔力も使う。

 ……あの時と同じだ。ベルゼにルミナスパニッシャーを放った、あの時と。


『ルーシーさん、そんなことをしたらまた……』

『そんなことはわかっている! だが、助けるんだろう?』

『ッ……!』


 ……そうだ。マリン・レヴィアは強力な魔法を何度も使っている。その度に艶美さんの生命力は削られ、消耗している。限界が近くても不思議じゃない。


『……わかりました。ルーシーさん、力を……貸してください!』

『ああ。受け取れ!!』


 ルーシーさんの魔力。他の魔族と異なり邪悪さを感じない。だけど私の霊力とも違う、荒々しい力が全身に巡っていくのを感じる。


「はぁぁぁ……“バーニングボディ”!!」


 全身に巡ったエネルギーが炎へと変わり、燃え盛る炎が私の身体を包んでいく。


「ハァ? 血迷ったの? それともまだ炎は無駄だってわかんないお馬鹿さんなのかしらぁ?」


 呆れの混じった口調。心底面倒くさそうに腕を振るい、龍鱗の氷嵐を放つ。


 私を目掛けて飛んでくる無数の氷の刃の嵐。その嵐の中を、マリン・レヴィア目掛けて突っ切る。私を包む炎に触れた氷の刃は瞬時に空気へ溶けていく。


『いいぞ! そのまま拳に雷を纏わせ、突っ込め!』

『は、はい!』


 炎を纏ったまま、今度は雷のエネルギーを両の拳に集める。


『ぐっ……』

『さ、さすがに(こた)えるな……。だが今は耐えろよ、舞桜……!』


 消耗しているのは艶美さんだけでなく私たちもだ。そんな状況で複数属性の同時使用は身体への負担も大きいみたい。


 苦悶が顔に浮かぶ。自分の力で生み出した電撃なのに、自分の手が痺れるような感覚がある。


「バッカじゃなぁい? そんなことして突っ込んできても、こっちは水に入れば良いだけだってーの。キャハハハッ♪」


 笑いながら「ザブンッ!」と水中へ逃れるマリン・レヴィア。せっかくの雷の拳は振るうチャンスすら与えられなかった。


「じゃあ、これならどうです!?」


 確かに、拳は振るえなかった。だけど私の手には雷のエネルギーが集まっている。このまま解き放てば飛び道具としては使えるはずだ。


 雷のエネルギーを、プールのようになったアリーナ席へと放つ。水中のマリン・レヴィアは速い。だけど彼女に直接当てなくても、水の中を電気が流ればきっと効くはず。


 ――だけど、マリン・レヴィアは平気そうな顔をしていた。


「確かに水は電気を通しやすいかもねぇ。この水、真水じゃないしー。でもぉ……」


 水が振動し、マリン・レヴィアの声が届く。彼女の言っていることは正しいはず。だけど彼女はほとんどダメージを受けていないようだった。


「こんだけ広けりゃ弱まっちゃうのよん♪ その程度のへなちょこ電気ショックじゃね」

「そ、そんな……」


 とっさに放った電撃。大量の水の前ではほぼ無力だったみたい。だからマリン・レヴィアは平気そうだったんだ……


 かなりの霊力と魔力を使ってしまったのに無駄に終わってしまった。


「ありゃりゃ? ひょっとしてもう諦めちゃったぁ? そんじゃ、今度はこっちから攻めさせてもらうわよん♪」


 ――ゴゴゴゴゴ……!


 会場全体が揺れる。そして、まるで間欠泉のように水が噴き上がり、水柱が立ち昇る。水柱は重力など無視するかのように形を変えていく。


「グォォォオオオッッッ!!」


 ただの水の塊のはずなのに、それはまるで生き物――龍のようだった。


「み、水でできた龍……!?」

「レヴィアの奴、いつの間にこんな技を!? これが真の奥の手か!?」


 ルーシーさんでさえ知らなかったマリン・レヴィアの奥の手。


「いつの間に? 何年アンタと会ってなかったと思ってんだか。まさか、強くなってんのが自分だけだと思ってたわけ?」

「くっ……!」

「ホント、アンタって世間知らずのじゃりン子よねぇ、ルシフェリア!!」


 咆哮を上げながら向かってくる水龍。その速さ、そして威圧感に圧倒され、私は避けることができなかった。


「がぽぽぽぽッ!?」

「キャハハハッ♪ そのまま溺れちゃいなさぁい!」


 水龍に飲み込まれ、そのまま水中へと引きずり込まれてしまう。


『た、助け……! い、息が、できな……!』


 このままでは溺れ死んでしまう。


 薄れる意識。だけど、声が聞こえた。


『水と空気の膜だ! 風船を包んだ時の要領だ! 急げッ!』

『ふ、風船……?』


 駄目……。そんなことを言われても、もう意識が、遠のいて……


『くっ、駄目か! 仕方がない、こうなったら一か八かだ!』


 薄れ行く意識の中、ルーシーさんの声が聞こえた。でも、駄目……だ…………


 ――シュゥゥゥ…………パァン。


 私の身体が一瞬だけ光り、全身から力が抜けていく。

 それはデビライズが解けたことを意味していた――

お読みいただきありがとうございました。

続く第58話も投稿しております。よろしければお読みください。

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