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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第3章

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第054話 閉ざされた舞台

 マリン・レヴィアの頭上で渦巻く水の塊。ステージを飲み込むほどの大きさへと広がっていく。


「食らいなさい! 渦巻く(ヴォルティコーゼ)潮流(・コレンティ)!!」


 マリン・レヴィアの手から放たれる水流の渦が私たちに襲いかかる。……ううん、私たちだけじゃない。ステージ上にいる愛奈さんや立花さんはもちろん、観客席のみんなも対象だ。


『舞桜、スカリオとかいう奴の攻撃を覚えているな?』

『スカリオの……? あっ!』


 渦は巻いていなかったけど、スカリオも巨大な水の塊を使って攻撃してきた。確かあの時は竜巻を起こして水を散らせたはず。今回も同じ要領で対処できるかもしれない。

 吹き荒れる竜巻を思い浮かべながら両手に力を込めていく。すると両手を中心に空気が渦を巻き始めた。


「は、はぁぁぁっ!!」


 手元で渦巻く空気を解き放ち、マリン・レヴィアの渦巻く潮流にぶつける。


「ぐ……ぐ……!」

『もっとパワーを込めて吹き飛ばせ!!』

「は、はい……!」


 巨大な水の塊を巨大な竜巻で受け止め、そして散らしていく。会場内に吹き荒れる暴風や降り注ぐ水に、観客たちは悲鳴を上げていた。


「つ、冷たい? これ、本物の水?」

「風も凄かったし、やっぱり夢じゃなくて現実なのか!?」


 観客たちの間に動揺が広がっていっている。そんな声が聞こえてくる。


「か、観客のみんなが……」

『気にするな! まだ雨に濡れたようなものだ』


 確かに実際の被害はその通りだけど、もし私が今も普通の人間で、観客の立場だったら絶対に不安で、絶対に怖い。きっとずっと震えたり悲鳴を上げてしまっているだろう。


「そんなに観客たち(有象無象)が気になるのー? もっとアタシを見てくれないと……妬けちゃうわねぇ♪」


 マリン・レヴィアの軽いのに悪意がこもっている、そんな声が会場に響き渡る。彼女がヒートアップしていっているのを感じる。


 ――だけど、会場内の空気……ううん、温度は真逆だった。


 会場内の温度が一気に下がり、雨のように降り注いでいた水に変化が。一瞬のうちに凍りつき、まるで大きな鱗のような塊に。

 それだけじゃない。本来なら重力で落下するはずなのに、その氷たちは空中で静止したままだった。――それは氷たちがマリン・レヴィアの支配下にあることを意味していた。


「風で散らせば防げると思ってたー? このク・ソ・ガ・キ♪」


 愉悦に満ちたようなマリン・レヴィアの声。そして彼女の意思に従い、鱗状の氷たちが一斉にこちらへ向かってきた。まるで氷の刃のような攻撃が襲いかかる。


 ――ザッ! ザッ!


 身を守る霊力の膜を。そして頬を、二の腕を、太ももを。氷の刃に次々と切り裂かれる。


「ぐっ……!」


 口からは苦痛の声が漏れ出し、傷口からは鮮血が……


 流れない。出血はしているけど、その傷口は氷で覆われていた。


「こ、これは……!?」

「だってぇ、出血で早々にくたばられちゃったらぁ……つ・ま・ん・な・い・でしょー?」


 ――ゾクッ。


 狂気に満ちた声。じわじわと相手を追い詰め、いたぶることを楽しんでいるかのような彼女の態度に、寒気が走った。


「り、りっちゃん!?」


 そんな私を、さらなる寒気が襲う。


「こ、このくらい、平気や……。愛奈こそケガ、せえへんかったか?」

「私は平気だよ……。で、でもりっちゃんが……!」


 いつの間にか意識を取り戻していた愛奈さんたち。それは一安心だけど、マリン・レヴィアの攻撃が立花さんを掠めてしまっていた。これは由々しき事態だ。


「ちぇー。ついでに愛奈も始末できてたら艶美ちゃんも大喜びだったのにー」


 軽い口調で、全く悪びれる様子もなく言ってのける“嫉妬”の漆罪魔。


「……なぁーんてね♪ 愛奈とルシフェリア。アンタたち二人は簡単には殺してあーげない♪」

「お前……!!」


 お得意の幻影を出すルーシーさん。その声には明らかな怒りがこもっていた。


「ま、愛奈さん! 立花さんを連れて、この会場から逃げてください!!」


 これ以上ステージ上にいたら確実に彼女たちを巻き込んでしまう。そんなことは絶対に許されない。()()()()()()()で二人を傷つけさせるわけにはいかないんだ。絶対に!!


「ハァー? そんなのダメに決まってるでしょー? ……ま、そもそもムリなんだけど♪」


 私の決意を打ち砕くように、レヴィアの軽い口調が告げる。だけど無理って……?


「チッ……。舞桜、駄目だ。辺りをよく見てみろ」

「え……?」

 

 舌打ちするルーシーさん。彼女に促され周囲を見回すと、いつの間にか会場の全ての出入り口が氷で閉ざされていた。


「い、いつの間に!?」

「……先程室温が急に下げられた時か」


 戦いに集中していて全く気が付かなかった。こうなってしまっては私たちはともかく、生身の人間の立花さんたちではもうどうしようもないだろう。


「逃がさないわぁ。ていうか逃すわけないじゃーん? 愛奈も、愛奈を推すクソどもも、生かしとく価値ないもんねぇ?」


 艶美さんが嫉妬していたという愛奈さんだけでなく、彼女を応援していたファンまでも手にかけようとするマリン・レヴィア。


 ……違う。愛奈さんのファンだけじゃない。ここには立花さん、そして艶美さんのファンだっている。


「……艶美さん。私は最近あなたを知ったばかりの、まだファンとも呼べないただのにわかです」

「……ハァ? 突然何言っちゃってんのー?」


 心底呆れたようなマリン・レヴィアの声を、無視して続ける。


「それでも、私はあなたの歌やダンスを観て、頑張る姿に心を打たれたんです!!」


 たとえ頑張る道は違っていたとしても。


「だから私は、あなたを止めてみせます。これ以上あなたに、あなたの仲間も、あなたのファンも、傷つけてほしくないから!!」


 柄にもなく熱くなってしまった。だけど、そんな私の想いが形になる。


 私の身体から溢れ出る力が、燃え盛っていく――

お読みいただきありがとうございました。

続く第55話も投稿しております。よろしければお読みください。

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