表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/61

第052話 羨望へ向けられる悪意

 今日はGracie(グレイシー)Stella(ステラ)のライブツアー初日。開演時間の13時が目前に迫る中、彼女たちはライブステージの真下で待機していた。もっとも志藤艶美だけは中身が“嫉妬”の漆罪魔・レヴィアだが。


 今人気爆発中のアイドルユニットだけあって彼女たちは高校生ながら既にかなりの場数を踏んでいる。それでもライブの直前はさすがに緊張の色が見えた。


「……いよいよやね」


 最初に言葉を発したのは仲田立花。三人の中ではムードメーカーポジションだ。


「二人とも、いける?」


 立花が二人に声をかける。するとセンターの千房愛奈はすぐに頷いた。しかし、艶美の方は反応がない。


 目を閉じ、(はた)からは精神統一をしているようにも見える艶美。しかし、その内面は違っていた。


(呑気な女。これから艶美ちゃんの“嫉妬”を余すことなくぶつけられるっていうのにさ♪)


 思わず艶美の口角にまで感情が溢れてしまう。


「……つーちゃん?」


 返事がなく、さらに普段は見せないニヤリとした表情に違和感を覚えたのだろう。愛奈が心配そうに声をかけてくる。


「……大丈夫よ、愛奈。今日のために準備を進めてきたんだもの」


 嘘はついていない。だが、準備の内容は愛奈たちの想像するものとは大きく異なっていることだろう。


 クイン・ルシフェリア――“傲慢”を司る漆罪魔のデビライズした姿。彼女を大勢の人間たちの見守る中で、派手な演出を添えて始末する。それが艶美に扮しているレヴィアの目的。その準備を、彼女なりに入念に進めてきたのだ。


「そうだね! 頑張ろうね、つーちゃん! りっちゃん!」


 屈託のない笑顔を向ける愛奈。その笑顔がまた潰したくなる。そう思うレヴィア。


「会場1分前でーす!」


 スタッフのこの声が彼女たちの円陣の合図。三人で右手を重ね――


「優雅にーー」

「輝けーー」

「「「Gracie☆Stella!!」」」

「ファイ、オーッ!!」


 気合は十分。彼女たちを乗せた昇降台が今、上昇し始めた――




「みんなー! 今日は来てくれてありがとー!!」


 1曲目を歌い終え、センター・愛奈の挨拶から曲の合間のMCが始まる。愛奈の挨拶に呼応し、彼女の名前を叫ぶファンたちの声が返ってくる。


「ウチら美多摩は初めてやけど、ええとこやね。気に入ったでー。なぁ、艶美?」


 立花がまずは当たり障りのない内容からトークを始めていく。そして艶美に話を振ってくる。


 しかし、艶美はすぐには反応しない。


「なんやー? 艶美、緊張しとるん? ハハハ、似合わんてー」


 沈黙を作らないためだろう。すぐに茶化すことで場を繋ぐ立花。だが、それでも艶美は反応しない。


「つ、つーちゃん……?」


 さすがに様子がおかしいと愛奈も感じ取ったのだろう。恐る恐るといった様子で声をかける。


「プププ……」


 ようやく艶美に反応があった。だが、それは彼女らしからぬものだった。


「つ、艶美……?」

「ど、どうしたの?」


 共に活動を続けてきた二人も、こんな反応を見せる艶美は初めてなのだろう。さすがに動揺の色を隠せないようだった。


「ゴメンゴメン。この後のこと妄想してたら堪えられなくなっちゃって♪」


 艶美のこの言葉に、会場のファンたちもざわつき始める。恐らくこの会場にいる全員が艶美らしくない、そう感じていたことだろう。


 しかしそれも当然だ。何故ならもう、艶美は艶美ではないのだから。そして、彼女を乗っ取った漆罪魔が、彼女を演じることをやめたのだから。


 艶美の身体から黒いオーラのようなものが立ち昇り、彼女の身体を水が渦を巻きながら包む。


「つ、つーちゃん!?」

「な、なんやこれ……? どないしたっちゅうんや、艶美!?」


 明らかに様子のおかしい艶美の姿に、激しく取り乱す愛奈たち。


「『どうした?』ですって。プププ……アハハハッ♪」


 二人の言葉に、ついに溢れ出すレヴィアの笑い声。


「アンタが壊したのよ、千房愛奈。才能だけでアイドルやってるアンタが、ね」


 一段低くなる艶美の声。透き通った綺麗なはずの声は黒くドスの効いたものに変わっていた。


「え……」


 共にアイドルとして活動する仲間だと思っていた相手に突然ぶつけられる恨み。その言葉は純粋な愛奈には酷く刺さったようだった。天真爛漫なはずの彼女の顔はすっかり青ざめていた。


「つー……ちゃん…………」

「……艶美、本気で言うとるんか!?」


 仲間に対して向けられた悪意に、怒りすら見せる立花。自分がアイドルで、ファンにも見られているということも忘れて。


「プププ、本気も本気よん♪」


 対し、レヴィアは軽い調子で返す。立花の怒りなど気にも留めずに。


「それじゃあ、そろそろ始めちゃおうかな? 覚悟してね、愛奈ちゃん♪」


 次の瞬間、艶美の身体は光に包まれた。そして彼女の身体から放たれる衝撃波が、ステージ上の愛奈と立花を襲う。


「きゃああああああッッッ!!!!」

「うあぁぁぁッッッ!?」


 生身の人間である愛奈と立花の身体はいとも容易く吹き飛ばされ、ステージの上に転がる。


「『デビライズ!!』」

「『シン・オブ・エンヴィー!!』」


 水柱が立ち昇り、艶美の姿が変貌していく――

お読みいただきありがとうございました。

続く第53話も投稿しております。よろしければお読みください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ