第030話 属性
随分と無様な姿を見せてしまった。だけど私はもう逃げない。負けない。スカイ・ベルゼを倒し、風茉さんやトモちゃん、捕えられている人たちを助けるんだから。
とは言えスカイ・ベルゼの言う通り、戦闘経験の浅い私。一体どうしたらいいんだろう?
――ここで今までの戦いを思い出してみる。
サタナスという魔族の三人の手下。彼らはそれぞれ炎、雷、氷を操る敵だった。彼らにはそれぞれの得意な攻撃をお返しして追い払うことができた。
次に戦ったのがベルゼの部下のフライ。部下だけあって風を操るところが共通している。彼には同じ空気の弾丸で攻撃した後に大地を操って手を作り、その手で地面に叩き落とした。まるで羽虫のように。
そう言えばあの時、大地を操るように指示したのはルーシーさんだ。どうして大地だったんだろう?
『あの、ルーシーさん。一つ訊いてもいいですか?』
『何だ?』
『昨日フライと戦った時、どうして大地の力を操るよう指示したんですか?』
その理由がわかれば、同じく風を操るスカイ・ベルゼへの対抗手段が思い付くかもしれない。
『そう言えばまだ“属性”について説明していなかったな』
『属性?』
『ああ。魔力を使った攻撃――いわゆる“魔法”には属性というものが存在している』
彼女によると魔法にはそれぞれ属性があるという。また、攻撃を受ける側にも存在している。
燃え盛る炎を操る“炎属性”。先ほどフリーゲが受けた攻撃などが該当する。
まるで消防車の放水のように激しい水流を生み出したり、瞬時に物体を凍らせたりする“水属性”。
空から雷を落としたり、手足から電撃を放ったりすることができる“雷属性”。
植物の成長を急激に促したり、花や葉を刃物のような武器にすることができる“森属性”。
これらは四竦みになっていて、炎は水に、水は雷に、雷は森に、森は炎に弱い。
風の力を操り、攻撃や高速移動も可能にする“風属性”。
大地や岩など、自然の中でも無機物寄りのものを中心に操る“地属性”。
この二つは互いに弱点を突き合う関係。
光を発生させたり、悪しきものに対抗する聖なる力を操る“光属性”。
周囲に闇を齎したり聖なる力に抗う力で、多くの魔族がこの性質を有しているという“闇属性”。
この二つも風と地のように互いに弱点を突き合う関係。
そしてこれらのいずれにも当てはまらない“無属性”。
以上、9種類が存在する、とのこと。大体はイメージできるけど、一部「そういうもの」と思い込まないといけないかも……
そしてフライの持つ属性は風。風属性の弱点は大地を操る地属性。だからフライには大地の力で対抗するよう指示をした、ということだったんだね。
『ちなみにスカイ・ベルゼの属性は?』
『フライと同じく風だ。だから地が効く。だがそれは奴もわかっているはず。馬鹿正直に攻めても、簡単には叩き込ませてくれないだろうな』
フライは簡単に弱点を突くことができたけど、スカイ・ベルゼは相当な実力者。そう簡単には行かないみたいだね……
「どうした? かかってこないのかい?」
風の力を操り、高速で私の周囲を飛び回り挑発してくる。
「だったらまたこちらから行かせてもらうよ!! 狼吼の羽音!!」
またあの攻撃だ。狼の遠吠えのような羽音と衝撃波が襲ってくる。このまま何もしなければ、また衝撃波で吹き飛ばされてしまうだろう。だけどまた同じ攻撃を食らうわけにはいかない。
「向かってくる衝撃波にぶつけるイメージで……えーいッ!!」
彼女の放つ衝撃波に対し、風の壁をぶつけるイメージで魔法を放った。彼女本体へのダメージにはならない。だけど狼吼の羽音の衝撃波を和らげることには成功した。
――だけど、和らげただけで完全に防いだわけではない。
「くっ……!」
『さすが、風を得意とする漆罪魔だな。風魔法の威力では向こうが上か……!』
「フフッ、当然だろう? 風使いでボクの右に出る者なんて存在しないんだからね!」
風と風のぶつかり合いで押し負け、吹き飛びはしないものの怯んでしまった。その隙に彼女の追撃が。また烈風の拳打による連撃が来る。
「フッ……。確かに『風使い』ではお前の右に出る者はいないのかもしれんな。だが……」
「生憎私たちは『風使い』じゃありませんから!!」
この瞬間を待っていた。烈風の拳打を私に叩き込むため、スカイ・ベルゼが私に接近する、この瞬間を。
私は身体に電気を纏い、自分を中心に放った。
「“パラライズボディ”!!」
「ぐっ……!!」
大した威力の技じゃない。だけど、この技には相手の身体を麻痺させる効果があった。
「か、身体が……お、思うように動かせない……!?」
私の思惑通り、スカイ・ベルゼは身体が麻痺し、思うように拳を繰り出せないみたい。ゲームや漫画のイメージでやってみたけど、やっぱり電撃には相手を痺れさせる効果があるんだね。上手くいって一安心。
「これで……終わりです!!」
地面に手を触れ、岩で巨人の手を創り上げる。そして両手で虫を潰すかの如く、掌を合わせた。
「がはっ……!! こ、こんな、技で……!!」
弱点属性の攻撃をまともに受け、彼女は倒れ込んだ。
「ハァ……ハァ……。や、やったぁ…………」
かなり翻弄されてしまったけど、なんとかスカイ・ベルゼをやっつけることができた。
「ルーシーさん、私やり……」
『まだだ! まだ油断するな!!』
「え……?」
弱点の攻撃が見事に決まり、勝利を確信。そこで完全に油断してしまった私。だけど、まだ終わってなんかいなかった。
「“蝿王の息吹”!!」
スカイ・ベルゼが倒れていたはずの場所。そちらを振り向く私。でも私の視界に入ってきたのは彼女の姿じゃない。激しく燃え盛る炎だった。
気付いた時にはもう、手遅れだった。彼女の吐く凄まじい勢いの炎が迫っていた。そして振り向くと同時。
私の身体は激しく燃える炎に包まれた――
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