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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第2章 漆罪魔現る!

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第020話 好奇心旺盛な魔王様

 神代先輩とのお茶会……もとい尋問から解放されたのも束の間。ルーシーさんの希望で放課後の寄り道をすることに。


 渋々な私とは対照的に、テンションが上がっていく心の中の魔王様。


『この建物は何だ?』

「これはコンビニですね。いろいろな商品が売っていて便利なお店です。中には24時間営業のところもあるんですよ。……うちの街には少ないですけど」


 数年前まではうちの街のコンビニもそのほとんどが24時間営業だったはず。だけどここ数年は人手不足等を理由に深夜の営業を休んでいるお店が多いみたい。


(まあ私は深夜に出歩いたりしないから、古都音さんたちからそう聞いたというだけなんだけど……)


 私がコンビニについて説明すると、案の定ルーシーさんはさらに興味を示してしまった。


『よし。早速入ってみようではないか』

「えぇ……」


 何も買わずに出るのはちょっと気が引ける。かと言って無駄遣いできるほど私のお小遣いは充実していない。どうにか寄らずに済ませたいところ。


「今後もし買いたいものが出てきたらその時寄りますから。それまで我慢してください」

『ちぇー、舞桜のけちんぼめ』

「子どもっぽい拗ね方しないでくださいよ。ていうかけちんぼなんて言葉、どこで覚えたんですか……」


 見た目20代前半、実年齢104歳の女性が小学生みたいな拗ね方をしているのは中々シュールな光景かもしれない。


「もう。拗ねるなら帰りますよ?」

『くっ……。仕方がない。今日のところは我慢してやる。だがいつか必ず行くからな!』

「はいはい。わかりました」


 こんなにコンビニに行きたがる人も中々いないと思う。まあ人じゃなくて魔族だから珍しいんだろうけど……


 コンビニを後にして街をぶらついていると、今度は本屋に興味を示したルーシーさん(104)


『ここは……書店か?』

「そうですね。ルーシーさん、書店は知っているんですね?」

『魔界にも書物はあるし、それを売る店もあるからな』


 なるほど。そういうところは人間界と同じみたいだね。そうなると気になることがある。


「ところでルーシーさんはどんな本を読むんですか?」

『ジャンルを問わずいろいろ読むぞ。その中でも特によく読むものを挙げるなら魔法関連の書物だな』


 ジャンルを問わずに読むというのはちょっと意外だったかもしれない。これは完全に偏見だけど、本を読むより身体を動かすのが好きで、読んだとしても漫画くらい。もしルーシーさんが人間だったらそんなイメージなのに。


『新しい魔法を覚えては試し、強くなる。それが楽しくてな。そんなことを繰り返しているうちに、気付けば全ての属性の魔法を扱えるようになっていたぞ!』


 腰に両手を当て、「えっへん!」と言っていそうなほど得意げに語る彼女。


「ルーシーさんが本をたくさん読んでいたのはちょっと意外でしたけど、魔法の話を聞くと納得できる気がします」

『むむ……。それはどういう意味だ?』


 眉をひそめるルーシーさんの姿が脳裏に浮かぶ。


「えっと……なんというかルーシーさんって、じっとして本を読むより外で元気に身体を動かす方が似合っている気がして。……わんぱく少年みたいに」

『おい誰がわんぱく少年だ』

「ご、ごめんなさい……」


 少し不機嫌そうに言うルーシーさんに対し、私は頭を下げた。今のはさすがに失礼だったかもしれない。


『そういうお前こそどうなんだ? 部屋にはそれなりの数の書物があったが……』

「え、えっと、私は小説が中心で漫画も少々、という感じですね」

『小説に漫画……? 我々には馴染みのないジャンルだな。今度私にも読ませろ』

「い、いいですけど……」


 興味を持ってくれるのは嬉しい。でも、魔族のルーシーさんにとって楽しいものなのかな? 「事実は小説よりも奇なり」という諺があるけど、彼女の場合は本当に物語より壮絶な経験をしていそうだし。


『ここも中には入らないのか?』

「はい。見るためだけに入るのは苦手なんですよ……」

『むぅ……』


 ルーシーさんが不満そうな声を漏らす。そんな声を出されても苦手なものは苦手。諦めてください。


『やっぱりけちんぼだな……』

「文句を言うなら本当に帰りますよ?」

『わ、わかったわかった』


 寄り道が終わってしまうのがよっぽど嫌みたい。ただ少し可哀想なのでフォローはしておいた方が良さそうかな。


「今度本を買いに来た時にゆっくり見て回りますから」

『!! 本当か!?』


 よほど嬉しいのか、ルーシーさんの声に活気が戻った。そんなに喜ばれては近々訪れなければ、という気持ちになってくる。欲しい新刊の発売日、近かったかな……?


 本屋を後にしてまた街中を散策する。ルーシーさんにとっては目に入るもののほとんどが新鮮なようで、「あれは何だ?」「ここは何の店だ?」「あの者はあそこで何をしているのだ?」等、矢継ぎ早に様々な質問が飛んできた。その中にはかなり答えにくい質問も。


(公園のブランコに座りながら虚空を見つめているおじさんが何をしているかなんて、私には答えられないよ……)


 きっと彼は少し頑張りすぎて疲れただけ。……うん。そうに違いない。


 ルーシーさんと脳内会話を繰り広げながら歩いていると、1軒のラーメン屋が視界に入ってきた。


『ここは何だ?』

「ここはラーメン屋さんですね。確かここ、普段は行列ができている人気店だったはずです」

『その割に今は誰も並んでいないようだぞ?』

「まあこの時間に食事をする人は少ないですからね」


 お昼にしては遅すぎるし、夕飯にしては早すぎる微妙な時間帯。人気店と言えどこの時間に行列はできないと思う。そもそも営業時間外かもしれないし。


『ところでラーメンと言ったか。私が来てからはまだ食していないよな?』

「そうですね。私はあまり食べませんし……」

『あまり美味いものではないのか?』

「そういうわけじゃないんですけど、脂っこいものが多いので私はちょっと苦手なんですよね……」


 決して嫌いなわけじゃない。昔ながらの中華そばや塩ラーメンのような比較的あっさりしたラーメンならたまに食べるし、おいしいとは思う。

 だけど最近はこってり系やガッツリ系の人気が高い。あまり詳しくはないけど、ここのお店も確かそういうラーメンが人気だったはず。


『私は非常に興味がある。今日の夕食はこの店で食べるのはどうだ?』

「む、無茶言わないでくださいよ……」


 ガッツリ系のラーメンなんて絶対に食べきれないし、そんなお店に一人で入る勇気もない。祖父母と一緒に来れば勇気の問題はクリアできるかもしれないけど、私も祖父母もガッツリ系ラーメンなんて食べられないからやっぱり無理だ。


『ああ……私のラーメンがぁ……』

「どれだけ食べたかったんですか……。あと注文もしていないのに勝手にルーシーさんのものにしないでください」


 まだ諦められない様子のルーシーさんを連れ、お店の前を通り過ぎようとした時。


 ――ガラガラッ。


 ラーメン屋の扉が開いた。中から現れたのは一人の女性。思わず目を奪われそうなほど綺麗なライトグリーンの髪。前髪はセンター分けしておでこを出しており、後ろ髪は低い位置で束ねたローポニーテールというスタイル。

 年齢はルーシーさんの外見年齢より少し若い、20歳くらいかな。ガッツリ系のラーメン屋から一人で出てくるのはあまり似合わない。そんな印象を受ける。


「おじさん、ごちそうさまでした♪ それと、営業時間外なのに無理を言ってすみませんでした」

「へっ、風茉(ふうま)ちゃんならいつでも大歓迎よ。宣伝もしてもらってるからな」


 女性と店主の男性の会話が聞こえてきた。どうやら女性は風茉さんというらしい。見たところ店主とは親しいみたい。とてもここのガッツリ系ラーメンを食べきれるようには見えないけど、完全に常連の雰囲気だ。


「またいつでも来てくれ。今は大変な時だろうけど、俺ぁいつでも風茉ちゃんのこと応援してっからよ」

「ありがとうございます♪」


 風茉ちゃんと呼ばれた女性は店主にお辞儀をして去っていった。すると、彼女を見送った店主さんと目が合ってしまう。


「お客さんかい? すまねぇな。まだ店開いてねぇんだ」

「そ、そうなんですね。わかりました」


 気まずさと申し訳なさが湧いてくる。食べたいわけじゃないのにじっと見てしまってごめんなさい……


『舞桜! ラーメン!』

「寄りません。ていうかまだお店は開いていないと言っていましたし……」

『ぐぬぬ……』


 悔しそうな声を出すルーシーさん。そんな声を出されても無理なものは無理だ。


「また今度にしましょう」

『くそっ! そればかりではないか!』

「そんなことを言われても……」


 私のお小遣いには限りがある。ガッツリ系のラーメンを食べるのは無謀だし、そもそもお店自体が今はやっていない。


『というか先程の女は一体何者だ? なぜあいつは営業時間外だというのにラーメンを食していたのだ? ズルい! ズルいぞ!!』

「さ、さぁ……? お店の人とかなり親しそうでしたけど……」


 そう言えば先ほど、店主が風茉さんに宣伝してもらっていると言っていたかも。その辺りが営業時間外でもお店に入れてもらえる理由だったりするのかな?


『コネか? コネ入店なのか!?』

「何ですかコネ入店って……。いやまあ、言わんとしていることはわかりますけどね」


 そんなコネ入社みたいに言わなくても……


『そうだ舞桜、お前もあの店主とコネを作れ! そうすればきっと……』

「無茶言わないでください! 変なこと言っていないで帰りますよ」


 駄々をこねるルーシーさんを連れ、帰路につく。だけど。


「うわーん!!」


 子どもの泣き声が私の歩みを止めた。


「様子、見に行ってみましょう!」

『帰るのではなかったのか?』

「それは……。だ、だって気になるじゃないですか!」

『ふむ……。こういうのがお前の興味を引くのだな』


 そういうことじゃない気もするけど、今はルーシーさんの言葉にいちいちツッコんでもいられない。私は急いで子どもの声のした方向へと向かった――

お読みいただきありがとうございました。

続く第21話も投稿しております。よろしければお読みください。

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