第四・五話 感情仕掛けの良く出来た即興劇について
「順調とでも言うつもりか」
目の前にいる男。徳夜を睨みつける。
底の見えない奴だ。
「まだ黒部透を実践投入すべきではないと?」
「違う。陰謀にガキを巻き込むなっつー意味だ」
徳夜が小さく笑みを浮かべる。
「……なにがおかしい」
「これは失礼。ですが貴方も大概では? 子どもを大切に思うのは当然の親心です」
「まったく……悪趣味な奴が」
捨て台詞を吐くしかないってのか。
「あの子も貴方の帰りを心待ちにしているようでした」
「……黙っていやがれ」
低俗な手段だ。
「ご存じとは思いますが、我々の”手段”も多くはない。使えない切り札に価値がありますか」
「それをガキにやらせるか」
針音を刻む。
「彼にしか出来ない事です」
「お前にもできるはずだが?」
それとも、その資格がないとでも言うつもりか。
「……破山の力は私が最もよく知っています」
「黒部透を使ったところで連盟は潰せない。お前の首を絞めるだけだ」
「だからこそ、貴方がいるのでしょう? 円蔵敏夫さん」
腹の立つ野郎。
「シュッツと連盟を同時に相手取れるって言うのか…………、っ、お前!」
徳夜がわずかに目を細める。
「だから、必要なんですよ」
「切り札……、だが!」
こいつは人の形をした悪魔に違いない。だが楽観主義者だ。
「……元連盟委員ともあろう方が随分と甘い展望だな。室長を俺に譲ったらどうだ」
「いずれは。しかしまだこの椅子に座っていたいですね」
泥船だ。
「なら俺はここで降りさせてもらおうか」
「おや」
徳夜の額に銃口を突き付ける。
くだらない。
「やめましょう。時間の無駄です」
眉一つ動かさず徳夜はそう諭す。
ああ、どうせ撃つつもりなんて無かったさ。
「だがどうやって。《C.B.計画》は連盟の肝入りだろうが」
「……計画は遂行してこそでしょう」
相変わらず回りくどい。
「なら言葉通りそうするぜ。透を連れて死地に行けばいいんだな? 室長さんよ?」
「ええ、期待しています。数少ない友である貴方に」
そろそろガキが目を覚ます頃合いだろうな。
「お前の友なんぞ勘弁願おうか」
この、悪魔め。




