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ゆい言  作者: Suica
8/18

ただの同級生

「あ、清原さん」

「クラスに転校生来たらしいじゃん」


「うん」


廊下で話しかけられたとき、すぐにその声で藤井優だと分かった。みんなからはふじーと呼ばれている。中学の2、3年のときにクラスが同じで、大体をそつなくこなす万能系男子だったという印象がある。顔立ちは普通だが、ユーモアがあるおかげか女子にモテる感じではなかった。


「男子?女子?」


「女子だった」


「へー、どんな感じ?」


どんな感じか…どんな感じか会ってまだ間もなかったのでとにかく、見たままの印象を言うことにした。


「うーん、なんかね、ザ・カワイイって感じかな」


「おー、めっちゃ見てみたいかも」


「なんでもさ福岡出身らしくて、博多美人ってこういうことを言うみたい」


「どの人か教えてよ、教室まで行くからさ」


「あ、うん、いいけど」


ついつい会話が弾んでしまった。男子とこうやってきちんと話すのはいつぶりだろうか。こういう存在は変に意識しなくていいから、話すときは気がとても楽だ。


「最近どんな感じ?」


「まぁ、ぼちぼちかな」


そうこうしているうちに、教室に着いた。教室を出た時よりは若干ギャラリーが増えていたが、そこまで気にするほどでもなかった。


「どの人、どの人?」


「ほら、窓側のあの人」


私は指を指して教えてあげた。どうやら2人はもう昼ご飯を食べ始めているようだ。


「へー、確かにかわいいかも」


めっちゃ見てみたいと言っていた割には意外と反応が薄かったが、男子ってこんなものなのだろうか。思えば、クラスの男子も休み時間にあまり話しかけには来てなかった。興味があると思いきやなかったり、逆にどうでもいいことで盛り上がったりするときがある。男子のこう言うところがどうにも不思議だ。


「名前なんて言うの?」


「伊藤結井さん」


「ゆい?清原さんと同じじゃん、どんな字で書くの?」


「結ぶに井戸の井」


「へー、なんか大変そうだね」


何が大変なんだと思う。


「何が?」


「ほら、女子ってさ、だいたい下の名前で呼ぶこと多くない?」


言われて、あ、確かにと思った。私は伊藤さんって呼んでいたつもりだったけど、唯ちゃんのことを呼ぶとき、なんて呼べばいいんだろう。ゆいちゃんって言うと伊藤さんのことも呼ぶことになってしまう。


「まぁ、そこらへんは何とかなるよ」


「ふーん、そっか、頑張れ」


とりあえず何とかなるとは言ったものの、具体的にどうするかは分かっていなかった。


「じゃあ、また。昼ご飯食べてくるわ」


「うん、私も。じゃあ、またね」


藤井くんは自分の教室に帰っていった。私も教室に入って自分の席に向かう。どうやら2人は何かを話しているようだ。


「ふー、お腹すいた」


「遅かったじゃんゆいゆい、何してたの?」


私はイスに座りながら、本当のことを言うのも少し面倒だったので


「まぁ、いろいろね」

と言っておいた。


弁当を机の上に置く。風呂敷を広げていると、唯ちゃんが興奮ぎみに言った。


「私たちの呼び名はっきりさせようよ、同じゆいの名にかけて!」


さっき2人が話してたのはこのことだったのかなと思いつつ


「いいよ」

と少し笑みをこぼして答えた。


藤井くんの言った通り、大変な昼休みになる予感がした。

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