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ゆい言  作者: Suica
7/18

昼休み

3限の授業が終わってすぐに伊藤さんの席に行ったので、休み時間ごとに来ていたギャラリーもまだ集まっていなかった。みんな、午前の授業を終えた達成感と昼休みを迎える嬉しさにふけっているようだ。


伊藤さんの机を後ろからちらっと見ると、3限の授業で使う教材のコピーが置いてある。おそらく、まだ引っ越してきたばかりで準備ができていないのだろう。


プリントやノートを机でまとめているときに、唯ちゃんがポンポンっと彼女の肩を叩くと、彼女は少し驚きながら私たちの方を振り向いた。


「始めまして、倉田唯でーす。これからよろしくね、伊藤さんっ!」


「ほら、ゆいゆいも」

「あ、うん」

となりの唯ちゃんに促されるままに私も自己紹介をする。


「清原ユイです、よろしくお願いします」


私は自己紹介ってこれであってるっけと思った。自分でもぎこちない挨拶に驚く。彼女の雰囲気に少し緊張してしまっているのだろうか。そんなことを考えていると、


「あ、よろしくお願いします。伊藤結井です」


私の言葉遣いに合わせたのか、彼女は少し会釈をしてから丁寧な語調で挨拶をした。


「ちょっと〜、堅いよーゆいゆい」

すかさず、唯ちゃんが笑いながらツッコミを入れる。


「確かに、ちょっと堅かったかも」

伊藤さんも少し笑みを浮かべながらそう言った。


「堅かったよね、私もびっくりしたんだけど」

私もその場に合わせて笑いながら答える。


少し恥ずかしかったが、このとき私は実のところほっとしていた。自己紹介の後、もしその場が沈黙したら気まずいなと思っていたからだ。特に私は彼女の後ろの席で、次の席替えまでは交流が多い方だろう。だから、初めましての挨拶の後に何も話さないのは次話すときに話しづらいような気がしていた。しかし、笑いが出るような雰囲気になっていたので、私は胸を撫で下ろした。


その場の雰囲気に安心していると、となりにいた唯ちゃんが

「あ、そうだ!伊藤さん、いっしょにご飯食べようよ、ね!」

と伊藤さんを昼ご飯に誘い始めた。


一瞬その提案に驚いたが、伊藤さんはどう返事をするのだろうと思って彼女の顔を伺う。すると、私の方を見て

「清原さんもいっしょに?」

と尋ねてきた。


このとき何で私のことを聞いたんだろうと思ったが、唯ちゃんがもちろんと速攻で返事をしたのでその疑問はすぐにかき消された。とにかく、いっしょに昼ご飯を食べることになった。


私の席と伊藤さんの机を合わせて、唯ちゃんが食べる場所を確保する。その最中に、伊藤さんが、

「あ、早くなおさないと」


と言っていた。何を直すんだろうとなおす、なおす、なおす…と、なおすを頭の中で連呼しているうちに、何だか訳が分からなくなってきた。これがいわゆるゲシュタルト崩壊かと思い、考えるのはやめることにした。


机の上のものを片付けて、手を洗いに行く。


みんな昼ごはん中なので、廊下に人はあまりいなかった。洗い終わった手をハンカチで拭くとき、その乾ききった生地に触れる感触が今日の雨も相まってどこか新鮮な感じがした。


濡れてしまったハンカチをポケットにしまい、空腹感を覚えて足早に教室へ戻る。今日はどんなお弁当かなと考えていると、ある人に話しかけられているのが分かった。


そう、それは中学のときの同級生、藤井優だった。


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