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ゆい言  作者: Suica
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表面と内部

朝礼の興奮が冷めやらぬうちに始まった授業は1限、2限が終わり、3限に差し掛かっていた。


1限が数学、2限が古典という時間割だったが、朝の授業はどうもうとうとしてしまっていて、授業中に取っていたノートも授業終わりに見ると、ところどころ字がのたうち回っていた。


ようやく目が覚めてきたのは3限の化学の時間、担当はD組の担任の柳先生だった。


「液体から気体への状態変化は蒸発と沸騰の2種類あって、その違いは表面と内部の気化の仕方が…」


板書をノートに取っていく。


「蒸発→表面からのみ, 沸騰→表面と内部 」


今度のテストに出そうだなと思いながら、無心で書き写していく。でも、なんでそんなの思いつくんだろうと私は思うことがある。蒸発と沸騰の違いなんて普通考えるだろうか?


そんなことを考えて、外の雨を見る。蒸発と沸騰か…勢いだけみたら今日の雨は沸騰っていう感じがするけど、沸騰した雨が降ってきたら大変だなと思う。とにかく、昔の人は良く考えたもんだと感心して前を向き直した。 


すると、前の席の彼女、伊藤さんの姿勢がいいことに気づいた。1限、2限は授業中に起きることに精一杯で、前の席の様子なんて気にする余裕はなかったからだ。


もしかして頭もいいのかなと思っていると黒板の表面と内部という字が目に写る。思えば、ここまで伊藤さんの表面は完璧に近かった。整った顔にきちんとした所作、クラスの注目を集めるのも無理はない。授業間の休みには、いつも人が周りに集まっていた。その度に私は席を立って雨を眺めていた。


もし、内部つまり性格まで良かったらクラスの騒ぎは沸騰どころじゃ済まないなと思いながら、今朝の唯ちゃんの言葉を思い出す。


「なんだろうね、同じゆいなのにこの差は。ねー、ゆいゆいどうする?」


聞かれた時はどうするもこうするもないと思っていたが、彼女の真剣に授業を聞いている様子を見ていると、表面から受ける印象も大事なんだなと思う。


そして、私はいつもは曲がった背筋を伸ばすことにした。ノートを取りながら、こんなに真面目に授業を受けるのは久しぶりだなと思う。長く続く気はしなかったが、とりあえずやってみようと思った。


「ふぅー」


そういった心の声が漏れる間には、3限がもう終わろうとしていた。普段曲げっぱなしの背筋が悲鳴を上げている。そして、お腹も空いていた。これが終わったら昼休みだ。


まもなく3限終わりのチャイムが鳴った。背筋を気持ちよく伸ばして席を立つ。そして、挨拶を済ませた私は唯ちゃんといっしょに伊藤さんのもとへ話しかけに行ったのだった。


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