五月の転校生
雨が次第に強くなっていく。雨か…好きでも嫌いでもないが、ここまでくると嫌いになりそうな雨だ。窓に流れてゆく雨粒を見る。これも雨、あれも雨…。
あ、そういえば今日自転車で来てるんだった。テレビの天気予報では一日中雨って言ってたけど、どうしよう。でも家からは遠くないし、最悪雨を突っ切ればいいかと思っていると、
「雨ひどくなってきたね〜」
唯ちゃんも雨の様子が気がかりなようだ。
「うん、そうみたい」
「それよりさぁ、ゆいゆい!みんななんでこんなワイワイしてるのか気にならない?」
そういえばそうだった。なんでこんなにみんなはしゃいでいるんだろう。まだ、担任は来ていないみたいだけど、唯ちゃんの様子からしてもいつもとは違うようだし。
「気になる。なんでなの?」
「それはーーーなんとーー」
なんだろう、この時期に盛り上がるイベントなんてあったっけ?
「転校生が来るんだって!このクラスに!」
「え、転校生?」
「そう、転校生」
「別の学校から来るっていうあの?」
「そう、あの転校生」
通りでみんな騒がしいわけだと思いながら、そんなにわくわくすることかなとも思った。
「ゆいゆいはどんな子が来ると思う?ちなみに私の情報網によると女の子だって」
私の経験上、転校してくる子は普通の顔立ちで特に目立ったところはない印象だ。最初の方はみんな話しかけるけど、次第に興味が薄れていって、結局仲のいい数人とつるんでおしまい。今回もそんな風になるんじゃないかと予想を立てる。
「案外、普通の女の子だと思うなー」
「そうかなー?私はめっかわに一票」
しかし、それにしても5月に転校生は珍しい。大体、新学期か二学期の初めに転校するものだよなと思いながら、時計を見ると朝礼の開始の9時を過ぎていた。みんな今か今かと待ちながら、どんな子か予想しているようだ。私が入ってきた時のあの視線の正体が分かった気がした。
その時、
「ガラガラガラ」
一気に前のドアに視線が集まる。担任の中村先生が教室に入ってきた。先生もあの視線に少したじろいだようだが、少し遅れているのを気にしているのか、すぐさま教壇の方に歩く。
「はーい、席について」
みんなスタスタと席に戻る。噂の転校生が気になって仕方ないのだろう。
「気になるね、ゆいゆい」
「うん」
唯ちゃんも席に戻っていく。
「えー、まず先にお知らせです。今日から新しい子がクラスに加わります。みんな、仲良くしてください」
数名の男子から歓声が起こった後、先生がそれを制止して言った。
「それでは、入ってきてください」
その時、これ以上にないくらい教室の引き戸に視線が集まった。私も少し遠いながら窓側から視線を送る。実のところ、私もどんな子が来るのか気になっていたのだった。




