第一章 名を忘れた主人 第九話 裏で動く者
整理整頓された執務室
窓の奥には、噴火を続けている火山があった。
執務室には、金髪の女性が一人で窓から街並みを見ている。
だが、景色は最悪と言っていいだろう。
火山灰が雪の様に降り注ぐ。
そのために、窓の外は灰色の霧が掛かった様な景色だった。
金髪の女性の視線が、デェスクの方に向く。
そこには、一枚の報告書
そこには、「“最上級神”様、保護、観察報告書」と書かれており、一枚の紙にズラリと報告内容が書かれてあった。
保護の欄には…
「保護:失敗」
「原因:謎の藍色から薄水色髪の女性が、急に背後から現れ、対象を謎の力で転移させた事になる対象の消失」
観察報告の欄には、長ったらしく書かれてあり、要約して言えば
「対象の記憶の喪失を確認、「秘書」と名乗る者の確認、現在の所在地はラント王国、ラント城内部」
そう書かれてあった。
金髪の女性
「面倒ね。ラント王国…」
「いつも邪魔ばかり、ほんと友好な関係を結ぶのはもう、不可能に近いわね」
金髪の女性の目が「スッ…」と細くなり、何かを思い出している様だ。
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脳裏に映った光景
459年前のサンダー王国が、浮かび上がる。
その時は、公の場でイーヴル王国の国王、「フェルス・イーヴル」国王と共に会見を行っていた。
最初は、サンダー王国の初代国王から挨拶をし、先ほどまで行われていた重要会議についての事を国民に大々的に報告していた。
自国の大勢の記者や報道陣に、イーヴル王国の記者や報道陣、その他の国からの記者や報道陣と世界的に見てもかなり大々的に行われた報告会だった。
内容は、イーヴル王国が開発した新たな武器をいち早く輸入し配備する事やイーヴル王国との火山灰を使ったエネルギー産業の活性化を狙った共同声明など
多岐に渡った。
金髪の女性は、当時自室にいた。
頬を赤らめ、時折り、「ゴホッ…ゴホッ…」と咳き込む。風邪を引いてるのは目に見えた。
金髪の女性は、ベッドの横にあったテレビから、生中継で報道されている会見を見ていた。
その日は、快晴だった。
火山灰が降り注がない、心地の良い日差しのある冬が始まったあたりだった。
会見は、順調に進んでいた。
次は、イーヴル王国の国王が発言しようとした時…
ドサッ…
誰かが、倒れた音がした。
カメラが、イーヴル王国の国王から隣にいたサンダー王国の国王に向けられるが、見当たらない。
いち早く、自体を察知したのは、イーヴル王国の国王だった。
すぐさま、大きな声で「敵襲だ!」と叫び、すぐに医療班か医師がいないか呼びかける。
大きの人々は、恐怖から逃げ惑う。
そんな事が生中継で放送されていた。
恐怖で顔を歪め発狂する声、子供の泣く声、戸惑う声、逃げ惑う人々の足音、怒鳴り声を上げる者
それはもう、大混乱だった。
サンダー王国のカメラマンが捕らえたのは、頭から出血して倒れているサンダー王国の初代国王の姿だった。
初代国王は、イーヴル王国の国王や秘書、近くにいた医療従事者の者に囲まれ、早急に延命治療が行われたが…助からなかった。
“ 逃げ惑う人々が、沢山いたために、中々、初代国王の元に行けなかった ”のが原因だ。
イーヴル王国の国王は、哀悼の言葉を述べた。
サンダー王国側の秘書は、その言葉を受け取り礼を申し上げると、亡くなった初代国王の遺体の胸元で泣いていた。
すると、いきなりイーヴル王国の国王が武器を取り出しサンダー王国側の秘書を攻撃しようとした。
が、それは勘違いだった。
イーヴル王国の国王は、高身長な成人男性と大差ないくらいの武器を構え、サンダー王国側の秘書を守っていた。
襲撃は、まだ、終わっていなかった。
イーヴル王国の国王は、自身の秘書やサンダー王国側の軍の指揮を一時的に担い、周囲の安全確保が出来たら、軍に秘書と初代国王の遺体を城の内部へと運ぶ様に命じた。
イーヴル王国の国王は、それからも懸命に指示を飛ばし、この事件での死者、負傷者をできるだけ抑え込む事に成功した。
その後、この事件もある程度落ち着いた頃に、「ミスト」と言う金髪の女性が、サンダー王国の二代目国王として就任する事になった。
その就任式が、終われば二代目国王「ミスト」からイーヴル王国の国王に、勲章が渡された。
それは、サンダー王国からからの細やかな“ お礼 ”を伝えたのだ。
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そんな事をひっそりと思い出していた。
「ミスト」の目元には、涙があった。思い出して、少々涙が出た様だ。
静寂の執務室に、ノックの音が聞こえる。
「ミスト」は、目元の涙を拭うと返事をした。
入って来たのは、薄水色髪の女性だった。
薄水色髪の女性
「あっ、ベツィーウング王国の国王様、トォオーノ様が只今お越しになられました」
少々、オドオドしながら「ミスト」に報告を入れる。
ミストは、優しい笑を浮かべ
ミスト
「分かったわ」
「それじゃ、これからについての会議を始めるとしましょう」
そう言って、薄水色髪の女性と一緒に執務室を後にした。
外では、火山灰が混じった雨が降り始めていた。
それは、まるで「ミスト」の心情を表しているかの様にも見えた。
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会議室に入る。
其処には、出された紅茶を飲みながら誰かを待っていた。
ミストが、客人の座る席の真反対に座る。
ミストの真反対の席に座る女性は、黄色からピンク髪のお団子ヘアをしたお嬢様が座っていた。
ミスト
「今日は、急な呼び出しにも関わらず来て頂き、感謝致します」
「トォオーノさん」
トォオーノ
「まぁ、来週に行われる同盟国会議の準備をするために、部活と一緒にこちら側に買い出しに来ていたのよ」
「運が良かっただけですわ」
少し冷たく突き放す様に言う。
視線は、ミストではなく、紅茶に向いていた。
トォオーノ
「それでなんですの?」
「わたくし、午後からは国内でイーヴル王国の外交官との面会の面会がありますの」
ミスト
「それは、早く用件を済ませてあげませんとね」
「詳しい事は、今から渡す報告書のコピーを見て貰えば分かる」
トォオーノ
「報告書のコピー?」
「そんなに、重要な事ですの?クンペル王国が関わっているのかしら?」
ミスト
「ある意味関わっていると言えるかしら…?」
トォオーノ
「ふ〜ん…」
トォオーノの視点が、やっとミストの方へ向く。
トォオーノ
「それは、興味深いですわ」
ニヤリ、と笑みを見せる。
ミストは、自身の背後にいた薄水色髪の女性にアイコンタクトを送ると、薄水色髪の女性が緊張した様子で、一枚の紙をトォオーノに手渡す。
トォオーノ
「……!…えっ?」
トォオーノの顔が、少し間抜けな顔になる。
トォオーノ
「“ 最上級神”様、保護、観察報告書 ”?」
「クンペル王国の国王が、発見?現在は、ラント王国にいるですって!」
ミスト
「これは、流石のあなたでも動揺してしまいますよね」
トォオーノ
「貴方、どうやって“ 最上級神 ”を見つけたって言うのよ!」
トォオーノは、あまりの内容に驚いてしまう。
そして、動揺しながらミストに質問を投げ掛ける。
ミスト
「“ 最上級神 ”様を見つけたのは、本当に偶々よ」
「私の趣味をご存知でしょう?」
トォオーノ
「人間観察…ですわね」
ミスト
「水晶を使って、人間界の“日本”と言う国の人間を観察している時に見つけましたの」
「再度、顔認証の機械などで調べてもほぼ100%一致と言う結果でした」
トォオーノ
「貴方の運の強さには、驚きだわ…」
トォオーノが、首を軽く横に振って、呆れてしまう。
ミスト
「まぁ、確かに」
「最初は目を疑ったもの…」
トォオーノ
「でも、これからどうするのですか?」
「このまま放置とは、いきませんでしょう?」
ミスト
「なんとか、こちらか貴方の王国で保護して、事情を説明した後に“ 神界大帝國 ”に連れて行きたいです」
「それで、その報酬として内密でもいいから「支援」を引き出せる様にしたいんです」
トォオーノ
「合理的ね」
「分かりましたわ。わたくしの方でも、スパイを潜り込ませておきましょう」
ミスト
「ありがとうございます。トォオーノ」
ミストに、笑みが現れる。
トォオーノは、その表情を見ると、時計の方に視線を逸らすと…
トォオーノ
「そろそろ帰らなくては、面会に遅刻してしまいますわ」
「もし他に、伝えるべき事が生まれたら、秘書の方に連絡してくださいまし」
ミスト
「えぇ、貴方の方でも情報が入ったら、即座に伝えて貰えると助かるわ」
「秘書とは、常に連絡が取れる様にしておくわね」
トォオーノ
「えぇ、そうしてちょうだい」
トォオーノは、そう言うと一礼して会議を後にした。
ミスト
「良かった。これで、“ 最上級神 ”様の保護に、一歩近づける」
「ネブラ、貴方も情報収集の方に注力しなさい」
薄水色髪の女性に、そう言い放つ。
ネブラ
「は、はい!承知致しました」
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次回
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