第一章 名を忘れた主人 第八話 忘れても覚えてる人々
部屋に沈黙が宿る。
すると、デェスクに座っていたレプブリークがいつの間にか、導の前に片足を出しもう片方を地面につけ跪く。
神陽導
「えっ?」
導が、「ギョッ」としていたら、レプブリッカも跪いていた。
それを見た導は、さらに「ギョッ」とする。
レプブリーク
「“ 最上級神 ”様、先ほどからのご無礼をお許しください」
レプブリッカ
「私も失礼な態度を取ってしまった事、誠に反省しております」
神陽導
「えっ?何してんの?」
導は、跪いてる2人を「ギョッ」とした目で見つめながら、周囲を「キョロキョロ」として、何が起きてるのか把握しようとしていた。
視線が、ヴァッサーに向けば、少し「ポカーン」とした顔でシヒルを見ており、シヒルに視線を移せば…
ヴァッサーから視線を逸らしていた。
神陽導
「えっと…まず…2人とも顔上げたら?」
レプブリーク
「いえ、このままで結構です」
レプブリッカ
「“ 王 ”の前での無礼な態度が許されるまでは…」
神陽導
「いや、私、怒ってないから…」
シヒル
「お二人さん。これ以上は、主人様が混乱するので、いつも通りになってください」
レプブリーク
「ですが…」
シヒル
「これは、命令です!」
神陽導
「“ 命令 ”って…」
その言葉を聞いた2人は、跪いた状態ではあったが、顔だけを上げ真剣な眼差しで見つめる。
すると、その光景を見てヴァッサーが、声を抑えて必死に笑いを堪えていた。
シヒル
「主人様、とりあえず、今の主人様の状況をヴァッサーさんと一緒に伝えると言う事でいいでしょうか?」
神陽導
「あ〜その方向でお願い。私も何が怒ってるのか全くわかんないから」
シヒル
「承知致しました」
「ヴァッサーさん、笑いを堪えるのはいいですけど、これから主人様の見つけた経緯など話しますよ」
ヴァッサー
「ぷっ…真面目なレプブリークが、“ 最上級神 ”様の目の前だと、ベリアル様並みの忠誠心出して笑える…」
レプブリーク
「おい、何処がおかしい」
ヴァッサー
「ファ〜面白い」
レプブリークの額に青筋が立っていた。
少々キレている様だ。
ヴァッサーが、なんとか込み上げてくる笑いを堪え切れると、真剣な顔になる。
シヒル
「まず、主人様の今の状態についてなんですが…」
「現在の主人様は、記憶を失っております。世界を導いていた頃の記憶は無いと言っても差し支えはないでしょう」
レプブリーク&レプブリッカ
「……!」
2人の目が大きく見開く。
シヒル
「そして、昨夜、どう言う経緯でかは分かりかねませんが、主人様がこの“ 神界 ”に戻って来た」
「今は、そう言う状況です」
神陽導
「ん〜いいや、こっちに来た詳しい経緯は、よく分かって無いけど…」
「なんかね。その“ 人間界 ”ってところにいた時に、学校に向かうとした時にフード被った知らない人に誘拐されそうになったんだよね〜」
ヴァッサー
「その人の特徴…分かる?」
神陽導
「えっとね〜」
「確か、黒いマントに顔が見えないくらいフードを被ってて、変な臭いのハンカチを口元に押さえられそうになったんだけど、そのハンカチによくわかんないマークが付いてた」
ヴァッサー
「もしかして!」
ヴァッサーが、慌てて腰に身に付けていたポシェットの様なものから2枚の紙を取り出した。
そこには、国の国旗の写真だった。
導に、その写真を見せると、「あっ!」と驚いた表情になる。
そのうちの一枚に、見覚えがあった。
神陽導
「あっ!これ!ハンカチに刺繍されてたよくわからないマーク!」
ヴァッサーが、写真を見れば…
ヴァッサー
「まさか、誘拐しようとして来たのって、サンダー王国の人なの!?」
レプブリーク
「なんだと!」
「おい、ヴァッサー。お前何か知ってんのか?」
ヴァッサー
「最近、サンダー王国に派遣したスパイから聞いた情報なんだけど…」
「「“ サンダー王国の国王 ”が、“ 最上級神 ”様を見つけた」って報告が」
レプブリーク
「おい、それ早く言わんか!」
ヴァッサー
「仕方ないじゃん!知らせ入ったの昨日の朝5時なんだし!」
「それに、すぐに爆破事件が3件も起こって対応に追われるわ!シヒルが、「“ 最上級神 ”様が戻って来た!」とかで勝手に外行くわで大変だっただもん!」
ヴァッサーは、必死に訴えてくる。
シヒル
「勝手に、城を抜け出した件は、申し訳ございません…」
神陽導
「でも、目を覚ました時には、7色の綺麗な花が咲いてる花畑の上で目が覚めたんだよ!」
ヴァッサー
「確かに、導ちゃんと初めて出会ったの、ラント王国の国境地帯にある山だわ」
レプブリッカ
「何処の山です?」
ヴァッサー
「あそこ、なんて山だっけ?」
シヒル
「確か、“ 生まれ山 ”だった気が…」
レプブリーク
「嗚呼、あそこか…」
レプブリークが、右手を顎に当て考えるポーズをとっていた。
ヴァッサー
「でも、なんで誘拐されたのに、生まれ山にいたんだろ」
シヒル
「確かに…“ 謎 ”ですね……」
執務室に、沈黙が宿る。
まだ、様々な疑問しか浮かび上がらない。
沈黙を破ったのは…導だった。
神陽導
「ねぇ、そんな事より…」
「いつまで、その状態なの?私、崇められるの嫌なんだけど…」
シヒル
「主人様が、嫌がってるので普通に立って話しましょう」
シヒルが、ジト目で答えると、跪いていた2人は、少し仕方なく立ち上がった。
その様子を見て、「ホッ」としていた。
神陽導
「私って、そんなすごい人だったの?」
ヴァッサー
「うん、そうだよ!」
レプブリッカ
「えっと、確か、書庫に“ 最上級神 ”の偉業が書かれた書物があった筈なので取って来ますね」
レプブリーク
「嗚呼、そうした方がいいだろう」
その言葉を聞いたレプブリッカは、一礼をして執務室を後にした。
神陽導
「ねぇ、ねぇ、私ってその“ 最上級神 ”?って7代も続いてる人なの?」
「と言うか、“ 最上級神 ”ってそもそも何?」
シヒル
「昨日、宿で話した事、覚えていますか?」
神陽導
「えっと、「“ 神界と魔界の架け橋 ”であり“ 世界の先導者 ”」って異名がついてるだっけ?」
シヒル
「正確には、“ 役職の異名 ”ですね」
「文字通り、主人様は、“ 神界 ”と“ 魔界 ”の架け橋で統治も行っていましたからね」
レプブリーク
「“ 最上級神 ”様は、素晴らしいお方だと父上から聞いております」
「一国の“ 王 ”として、この様に面会出来て非常に心喜ばしいです」
レプブリークは、手をそっと胸に当てて礼を言う。
神陽導
「そんな礼儀正しくしないで!身体がむず痒くなっちゃうよ!」
導は、手を振って「礼儀正しくしないで欲しい」と頼み込む。
部屋に、ノックの音が響き渡り、レプブリークが声を出すと複数の古文書みたいな本を持ったレプブリッカが現れた。
レプブリッカ
「ふぅ…「古文書の方がいいかな」と思い古文書多めに持って来ました」
「“ 最上級神 ”様の逸話多すぎ…」
レプブリッカは、レプブリークのデェスクの上に古文書を置く。
導は、その古文書を開いて読んで見る。
古文書は、文字が薄れ非常に読みづらいが読むと、七代目がやった改革や偉業は、多岐に渡る。
その多さに、導は、ドン引きする。
神陽導
「うわぁ!私こんなに偉業があったの?」
シヒル
「“ 初代 ”様と比べたら、これくらいは、下の下状態ですよ…」
「何せ、“ 初代 ”様は、改革や偉業を全て数えるなら、数十万はいきますよ」
その発言には、シヒル以外の全員がドン引きしていた。
それに、比べ導の改革や偉業は、合計でも「ギリ100に届かない」ほどで、比になっていなかった。
神陽導
「バケモンじゃん。その“ 初代 ”の人…」
ヴァッサー
「えぐっ……」
レプブリーク
「………………………」
レプブリッカ
「ほぇ…」
それぞれ、呆れていたり、「ポカーン」としていたりと表情は様々だった。
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コツコツ…
???
「チッ…邪魔さえ入らなければ…」
執務室の前の廊下に、小さく響く男の声
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ドガァァァーーーーン!!!!!!!!
大きな火山が小さく噴火した。
灰色の火山灰を含む煙が何千メートルと立ち上り、街へと降り注ぐ。
火口を見れば時々、溶岩らしき赤い何かが飛び跳ねている。
そんな光景を静かに、執務室の様な書類が綺麗に整った部屋の窓から眺める金髪の女性が一人、その背後で書類をものすごいスピードで処理している薄水色髪の女性が一人いた。
金髪の女性の手には、熱い紅茶が入ったティーカップが握られていた。
その女性は、紅茶の匂いを嗅ぐと口をつける。
金髪の女性
「貴方の入れる紅茶は、美味しいわね」
薄水色の髪の女性
「あわわ、ありがとうございます!国王様!」
薄水色の髪の女性が、「あわあわ」と答える。
金髪の女性は、薄水色の髪の女性に視線を移すと「クスクス」と笑う。
金髪の女性
「……“ 七代目最上級神 ”…どうかご無事でいてください」
金髪の女性の視線が、また、窓の奥で噴火を続けていた大きな火山へと移る。
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次回もお楽しみに、お待ちくださいね♪
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次回
第一章 名を忘れた主人 第九話 裏で動く者




