第一章 名を忘れた主人 第六話 朝
チュンチュン
鳥の鳴き声が聞こえた。
窓からは、程よい暖かさの朝日が入り込んで来る。
神陽導
「んぁ?…」
導は、大の字で眠っていた。
「パチッ」と導が薄らと目を開ける。
首元に重さを感じる。
視線を移動すれば、シヒルが首元に寄り添って寝ていた。
「ポンポン」と軽く撫でる様に、シヒルの頭を撫でてあげる。
シヒルは、まだ、眠っている。穏やかな顔で、ただ、それだけなのに心が自然と温まる。
それに、この場面に何となく既視感を感じていた。
シヒルの頭が動く。「パチッパチッ」と瞼を動かせば、顔を導の方に向ける。
まだ、眠そうな声で…
シヒル
「おはようございます。主人様」
神陽導
「おはよ。シヒル」
ただ、これだけだった。
何度も何度も既視感を感じては、心の底でもやもやが募る。
時計を見れば、時刻は7時。
テーブルの上には、サンドイッチと程よい温かさの蜂蜜ミルクが用意されていた。
「従業員の人が運んだのかな?」
そう思って近づくと、一枚の紙が置いてあり、「導ちゃんとシヒルの朝食 ヴァッサーとその兄より」と書かれてあった。
紙には、ヴァッサーと思われる少女とそのお兄さんと思われる絵も描かれてあった。
神陽導
「えっ、ヴァッサーちゃん…」
「朝ご飯用意してくれたんだ!」
ズコッ…
シヒル
「そこですか!?驚くところ!」
神陽導
「えっ?」
シヒル
「主人様、昨晩はこの部屋の鍵ちゃんと閉めてらっしゃいましたよね?」
神陽導
「それの何がおかしいの?」
導は、まだ何がおかしいのか分からなかった。
シヒル
「普通、出入り口が閉まってるのに、どうやって部屋に入ったんですか?」
神陽導
「あっ…」
「確かに、どうやって入ったんだろ?」
導の顔が、「ポカーン」となる。
パッと思い浮かんだのは、「此処に、ヴァッサーのお兄さんが働いてるから従業員の特権を使ったのかな?」と思った。
神陽導
「まぁ、食べよっか」
シヒル
「そうですね」
「考えても仕方ないですからね…」
導は、サンドイッチの入ったお弁当を開ける。
そこには、卵サンドにイチゴクリームサンド、サラダサンドなどカラフルなサンドイッチだった。
横に、シヒル用の小さなサンドイッチのお弁当があり、手の無いシヒルは念力の様な力を使用して開けると、嘴を器用に使って丸呑みする。
導は、隣で、「手がないって大変だなぁ〜」と呑気にそう思っていた。
そして、お腹の部分を見れば食べたものが普通に見えており、謎の力と言うべきか「ポンッ」と音を立てるかの様にして消えていった。
シヒル
「どうされたんですか?」
神陽導
「えっ、あ!何でもない!」
そう言って、キャベツハムサンドを急いで食べ始める導
ゴックン
神陽導
「ご馳走様でした」
「あ〜美味しかった〜」
シヒル
「流石、“ 農業の王国 ”と言う別名を持つ王国の国王だけありますね」
神陽導
「“ 農業の王国 ”?」
導が、「キョトン」っとする。
シヒル
「ヴァッサーさんの王国、“ クンペル王国 ”は、農業が他国に比べてとっても盛んなんです」
「平坦の土地が多く、災害などもあまり起きませんからね」
神陽導
「ほへぇ〜ん?」
「今なんて言った?」
導は、シヒルの話を聞きながら水を飲んでいると…気になる単語が耳に入り高速で、シヒルの方に視線を向ける。
シヒル
「えっ?ヴァッサーさんの王国、クンペル王国についてですよ」
「主人様、おかしいところなんてありますか?」
神陽導
「シヒル、私、ヴァッサーちゃんが国王やってる事初めて聞いたんだけど…」
「なんか、「腕にブレスレット着けてるなぁ〜」とは思ったけど…初耳だよ?」
シヒル
「あっ、伝え忘れていました…」
「申し訳ございません」
シヒルは、頭を「ペコリ」とする。
導は、「もう…」と頬を「プクッ」と膨らませて軽く叱る。
神陽導
「それで、ヴァッサーちゃん…そんなお偉いさんだったの…」
シヒル
「まぁ、ヴァッサーさんは、王としての自覚が足りなさすぎるので…」
神陽導
「へぇ〜そうなんだ…」
導は、ちょっとだけ「ポカーン」としていた。
だが、心の中で、「確かに、護衛なしでこんなところ歩いてるのは…なんか納得しちゃうかも…」と思っていた。
そして、シヒルが用意した洋服に着替えて、支度を終えて部屋を後にした。
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次回
第一章 名を忘れた主人 第七話 王との面会




