第一章 名を忘れた主人 第二十三話 眠り姫
白い壁、天井が印象的な部屋だった。
この部屋には、数人分の簡易ベッド、点滴、心肺測定器などがあった。
そんな部屋に、1人の人が眠っていた。
その隣には、骨と翼だけで出来た変な生物が、見守っていた。
シヒル
「主人様…」
「目を覚ましてください…」
導は、腕に点滴や心肺測定器などを付けられていた。
導の身体には、包帯が巻かれていた。顔以外全てが、包帯に包まれていた。
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此処は、導の夢の中だ。
心地の良い太陽の日差しが、照っていた。
導は、大きな土手に寝っ転がっている。
導が横を見れば、骨と翼だけの姿のシヒルではなく、本来の可愛らしい姿のシヒルが土手で眠っている。
土手の下には、小さな小川が流れ、そこを中心に赤い花が咲いていた。
赤い花は、さまざまだ。
赤バラ、赤い百日草、赤ゼラニウム、赤いチューリップ、赤いポピーと多種多様だ。
風が吹いた。すると、花びらが舞う。
その光景に見惚れる。
神陽導
「綺麗だなぁ…」
導は、また、寝っ転がる。
暖かい風が、頬に当たり、髪が靡く。
導が、目をゆっくりと閉じる。
そのまま「スゥースゥー」と寝息を吐きながら眠る。
あれから、数時間が経ったであろう。
導の首元に柔らかい温もりを感じとって、目を覚ます。
太陽は、沈み、夜空には、星々が輝いていた。
首元に、そっと手を当てると、シヒルが眠っている事がわかった。
シヒルの翼の柔らかい羽毛が、手に伝わってくる。
夜空に、灰色に輝く流れ星が「キラーン」と流れる。
神陽導
「さっきの流れ星…お母様とお父様を合わせたみたいな流れ星だったなぁ…」
シヒル
「ん…?主人様?」
導が、「ボソッ」と呟くとシヒルが目を覚ます。
神陽導
「あっ、起きちゃった?」
シヒル
「いえ…もう少し寝ます…」
そう眠そうな声で言って体勢を整えて、導の首元で眠りに着くシヒル
導は、無言で、星を眺め続ける。
神陽導
「あの時も夜だったな…」
流れ星が流れる。
今回は、黒色だった。黒色の不吉な流れ星だった。
黒色の不吉な流れ星が、消えた後…その消えた地点から世界を“ 侵蝕 ”する様に、黒い何かが覆っていく。
侵蝕された場所から、誰かの高笑いが聞こえる。
女性の全てを嘲笑う様な声だった。
導が、起き上がり空を見る。その拍子に、シヒルも目を覚まし空を見上げる。
2人は立ち上がる。
まるで、恐ろしいものを見るかの様に…
空に視線を向ければ、大きな“ 目 ”があった。
その目から黒色に輝く水滴が堕ちれば、目にも止まらぬスピードで、血管を這うようにして、黒い何かが広がる。
人々の逃げ惑う声が聞こえた。悲鳴も聞こえた。怒号も聞こえた。
終わりのない“ 終焉 ”が始まったのだ。
逃げ出したい。
でも、皆んなを守りたい。
肩に、手がのる感覚がした。
そちらを見れば、白髪の人がいた。
神陽導
「お母様…」
お母様
「あとは、私に任せない」
「お父さんは、私が助けるから」
シヒル
「お母上様」
お母様
「貴方は、貴方の責務を果たしなさい」
「こっちの責務は、私が果たさないとだからね。それじゃ、また、会いましょうね」
お母様は、導の肩をそっと押して、後ろに倒される。
神陽導
「お母様!!」
そう言って、導の背後にあった黒い渦を巻いた何かに吸い込まれていった。
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神陽導
「ハッ!ハァ…ハァ…」
導が、布団を蹴り飛ばし、飛び起きる。
胸に手を置いて、呼吸を整える。
シヒルが、近付いてくる。
シヒル
「主人様!?大丈夫ですか?」
神陽導
「ハァ…ハァ…シヒル…」
「ねぇ、フェルスはどうなってるの?」
シヒル
「イーヴル王国、4代目国王のフェルスさんは、死亡したために…」
「現在、その秘書の“ ズィヴァーチ ”さんと言う方を裁判に掛けているそうです!」
神陽導
「その場所まで、案内しなさい!」
「今すぐ!」
シヒル
「ですが、身体が…」
神陽導
「そんなの関係ない!これは、命令よ!」
導は、必死に訴える様にして、医療部屋を後にした。
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次回
第一章 名を忘れた主人 第二十四話 虫の息の裁判




