第一章 名を忘れた主人 第二十一話 縛られた王
神陽導
「キャーーー!!」
「落ちる!落ちる!!」
導は、黒い空間に落ちていく。
手をバタかつかせる。
地面の見えない深淵に落ちていく。
必死に、手を伸ばす。
「このままじゃ、死んじゃう!」
こう思うだろう。
導の目に涙が浮かび、それが黒い空間へと消えていく。
神陽導
「誰か…助けて…」
導は、小さな声でそう言った。
すると、腰に身につけた“ 長老 ”から貰ったお守りが、「ピカー」っと、光出した。
導が、光に包まれると、身体が「ふわっ」と浮く。
脳内に、「自分が、空を飛んでいる風景を思い浮かべてみてください。“ 名君 ”」と亡くなった長老の声が聞こえた。
導は、目を閉じて「もし、自分に翼が生えたら…」そんな妄想をしてから、自由に空を飛ぶ姿を思い浮かべるの
その思い浮かべてる光景には、既視感しかなかったが…それでも、思い続けていた。
背中に、違和感を覚える。
だが、気にせず、空を飛ぶ姿を思い受けべ続ける。
バサッバサッ
そんな音が聞こえ、目を開け振り向くと…
背中には、2枚の大きな翼、その下に、小さな翼が2枚、腰に中位の白い翼が2枚生えていた。
導が、翼を動かす様に想像すると、背中から生えた翼が動く。
導の顔が、明るく「ニパッ!」となると、一回転をする。
完全に、空を飛ぶコツを掴んだ。と言うより思い出したのだ。
導は、上に向かって飛ぶ事にした。
理由は、そこに光があったから
だが、いざ向かおうとしたら、脳内に、“ 長老 ”の声で
「そっちじゃないよ。確かに、そっちは出口だ」
「だが、“ 名君 ”に助けを求めてる者がいるんだ。助けてやってくれないか?」
と、長老の声は徐々に弱々しくなっている。
お守りが、再度、光出す。
導は、お守りに向かってこう言った。
神陽導
「教えて!私の助けを求めてる人の元へ連れてって!」
お守りから、左へ向かう一本の光の光線ができた。
導は、そちらの方に飛んでいく。
時折、子供や大人と男女年齢問わず声が聞こえる。
それは、全て日常会話から政府の機密事項と多種多様だった。
導の頭の中には、少しずつ何かが流れ込んで来る。
集中して思い出そうとすれば、それは、“ 神界の民 ”たちとの大切な、大切な“ 思い出 ”だった。
神陽導
「グスン…ヒックッ…」
暗闇に、導の涙が落ちる。
今まで、忘れてた沢山の“ 思い出 ”が、湧水の様に溢れ出て来る。
忘れたくないものを無理矢理忘れさせられていたのだから…
泣きたくなるもの分からなくはない。
バサッバサッ
翼は、動かし続ける。
光が指し示す方向へ進み続けると、「ゴゴゴ…」と地鳴りの様な音が聞こえる。
下を見れば、暗闇ではなく薄暗いが、大きな谷になっていることが分かる。
また、「ゴゴゴ…」と先程よりも大きな音が鳴り響く。
すると、導に向かって尖った岩が突き刺さる様に生えて来る。
神陽導
「ぎょわっ!?」
導は、ギリギリのところで、身体を逸らして、回避する。
そして、また、下の方向から「ゴゴゴ…」と聞こえては、導に向かって尖った岩が生えて来る。
導は、飛ぶスピードを少し早め、攻撃を交わすように飛行し続ける。
そうして、飛び始めてから体感10分ほど飛んだ頃に、上からスポットライトの様に照らされる場所を発見した。
お守りの光もそこを指し示しているようだった。
その周囲には、頑丈な城壁の様に、尖った岩が無数に生えていた。
導が、その尖った岩の城壁を飛んで通過すると、中央に人を発見する。
その人の近くで、地面に着地すると、その人の顔がよく見えた。
導は、驚いた。
茶髪に藍色のメッシュ、灰色のライダースーツの様な服を身に付けた男性がいた。
神陽導
「フェ…フェルス?」
その人の容姿は、フェルスと瓜二つで、まるでコピペした様な人だった。
フェルスと思われる人が、目を開ける。
「キリッ」とした鋭い目つき、その人は、空中で坐禅を組んでいたが、それを解き地面に足をつける。
フェルス?
「お久しぶりですね。“ ルージュ ”さん」
ドクン!
導の心臓が、大きく脈付いた様な気がした。
「ツー」っと、冷や汗が頭から頬へと垂れる。導の目には、大きな戸惑いがあった。
神陽導
「な、なんで…その名前を…」
「捨てた筈の名前を…どうして…」
フェルス?
「3000年以上は生きてるんです」
「貴方様が、生きていた頃を知ってるんです。なら、知っててもおかしくはないでしょ?」
神陽導
「待って、急に年齢の次元が変わっちゃった…」
フェルスと思われる人は、敬語で丁寧に答える。
導は、相変わらずタメ口で話しかけるばかりだった。
神陽導
「って、貴方、フェルスとそっくりだけど…どなた?」
フェルス
「自己紹介が、遅れましたね」
「私は、“ フェルス・イーヴル ”と申します。元イーヴル王国の第3代目国王だった者です」
神陽導
「えっ…同じ名前?」
フェルスは、軽く会釈をして自己紹介をする。
導は、フェルスの名前を聞いて首を傾げるだけだった。
フェルス
「えぇ、弟が言っていた筈でしょう?」
「イーヴル王国は、初代国王が貴方と契約をして、“ 名前 ”が固定される代わりに、強大な力を得る契約の事を」
神陽導
「あっ、そうだ!えっと、確か、“ 再生結晶 ”の契約の一部だったよね」
フェルス
「そうです」
神陽導
「嗚呼、そっか…」
「兄弟で、国王になっちゃったら名前も同じになっちゃうんだ」
フェルス
「貴方と会っていたフェルスは、私の双子の弟です」
神陽導
「あっ、だから、めっちゃそっくりなんだ」
導が、「ピコ〜ン」となった。
神陽導
「それで、此処は…どこ?」
フェルス
「ここは、擬似界です」
神陽導
「ぎ、擬似界?」
フェルス
「えぇ…神脈を模倣して作ったイーヴル王国の民の“ 魂 ”の現在の帰り場所です」
フェルスが、微笑むように不適な笑を浮かべる。
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次回
第一章 名を忘れた主人 第二十二話 “ 思い出 ”と母からの2番目の“ 贈り物 ”




