第一章 名を忘れた主人 第十六話 誘拐された王
長老が亡くなった。
医療班が、調べたら毒殺だった。
毒味役すら意味がない毒が使用されていた様だ。
医療班が、丁寧に長老の腰に身に着けられていたお守りを外し、導に手渡す。
導は、お守りを優しく受け取り、胸に当てる。
温かった。
また、両手で握っているお守りを見る。
紫色に金色の刺繍がされていた。表には、「お守り」と書かれてあり、裏には、「開運祈願」と書かれてあった。
導は、腰に身に付ける。
そして、ゆっくり優しくお守りを撫でてあげる。
医療班が、長老の遺体を運ぶ為に担架を持って来た。
国王たちの面々は、運びやすい様に少し離れる。
導の右手を胸に当てて心配そうにしていた。
すると、導は、背後からの気配を感じて後ろを振り向こうとした。
口元に布の様な柔らかい物が添えられる感覚がした。
驚いた。声が出せなかった。
そのまま…身体は沼に落ちていく様に地面に涼んでいく。
皆は、それに気づかなかった。導は、手をバタバタとさせて、沼に落ちていかない様にしていた。
導が、地面の中に消え去った。
地面には、水の波紋の様なものが小さく浮かび上がっていた。
ベリアルが、シヒルの後ろにいた導の方を見る。
ベリアルの顔が歪み、炎の火の玉が飛ぶ。
シヒルに向かって、腕が伸びていたがベリアルの攻撃で、肘から上の腕が吹き飛び「コロコロ」と転がった。
地面に倒れた黒い腕から、「ドロリ」と血が流れる。
シヒルに向かっていた切られた腕は、そのまま地面の中に潜ろうとしたところを瞬間移動した来たミストが、その腕に向かって攻撃をした。
地面には、ミストの攻撃で軽く凹み亀裂の入った地面と一枚の紙が残されていた。
ミスト
「いない…」
トゥマイニ
「ちょっと!地面破壊しないでください」
ミスト
「申し訳ございません…」
ベリアル
「そんなことは、どうでもいいんだよ!」
「導さんは?“ 最上級神 ”様は!?」
皆が、あたりを見渡す。
そこに、“ 導 ”の姿は見られなかった。
__________
一方、導はと言えば…
仰向けで沈む。
腕を必死に上へと伸ばすが、身体は沼の様で水の様な液体が身体にまとわりつく。
息が出来なくて苦しい。
「ボッ…」と、口から、空気の塊が出る。
頭が、「ボー」っとする。瞼が、落ちて来る。
__________
導が、いなくなった国王面会室では…
一枚の残された紙を見ていた。
紙には…
「神陽導こと、“ ルージュ・フランマ・アスタロト ”は、我々“ イーヴル王国 ”が預かる。
それと、一つだけ感謝を述べよう。
レプブリーク、誘拐未遂の時に伝えた事をベリアルに伝えてくれた事、非常に感謝している。
それと、これは置き土産だ。
我々、“ イーヴル王国 ”は、悪の組織と契約を結んだ。
内容は、そのうち分かることだ。
それじゃなぁ。ベリアルとその配下の王たち…
“ 最上級神 ”は、我らが…いや…俺が、丁重に“ 有効活用 ”してやろう。
イーヴル王国 フェルス・イーヴル」
そう書かれてあった。
王たちには、戸惑いと困惑の顔が現れる。
特に、ミストはかなり驚いていた。
何方とも、“ 友好国 ”と思っていたのは、ミストだけだったの様だった。
そんなことが“ 分かった ”のだから…
ベリアルは、「グシャ」と音を立てて紙を握り潰し秘書のトゥマイニに、言い放つ。
ベリアル
「こんな愚弄を堂々とするとはなぁ!」
「トゥマイニ!今すぐに抗議の公文を送れ!それでも、態度を改めないのであれば各国に“ 経済制裁 ”をするようにする通知書を送れ!」
トゥマイニ
「ハッ!すぐに、ご準備を!」
そう言って、すぐさまに外交部の職員が働く外交執務室のへと向かった。
シヒル
「ヴァッサーさん!どうしましょう!」
「主人様が…主人様が…!」
シヒルは、ウルウルとした目になってヴァッサーの方を見る。
ヴァッサーも困惑顔で、「どうしたらいいのか…分からない」そんな事が顔に出ている。
だが、唯一焦っていなかった人々は、アイコンタクトを取り合っていた。
ヴィントが、言い放つ。
ヴィント
「っま、最悪、宣戦布告してでも導ちゃ〜んを奪いに行けばいいさ〜」
「俺は、偵察に行って来や〜す」
そう言って、身体を風に変化させて何処かへ行ってしまった。
ベリアル
「“ 宣戦布告 ”…検討する余地があるな…」
部屋に、沈黙に包まれる。
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次回
第一章 名を忘れた主人 第十七話 “ 有効活用 ”する為の契約




