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第一話「逢魔が時の巫女」③
離れ、光の余韻に紛れて景真の足元へ滑り落ちた。
紅緒は崩れ落ちる蛇妖から目を離しておらず、その行方には気づかなかった。
金色の目から赤黒い濁りが引いていく。紅緒を追い続けていた鎌首が力を失い、重い音を立てて街道へ伏した。
「成功……したのか?」
景真は身を起こした。
紅緒は弓を下ろさない。倒れた蛇妖の呼吸を見つめ、その表情を険しくした。
札は外れた。それなのに、鱗の隙間から漏れる妖気は止まらない。外へ膨れ上がる力ではなく、内側から身体を壊すように乱れている。
蛇妖が、浅く息を吐いた。
先ほどまで街道を揺らしていた巨体が、今はわずかに震えるだけだった。
紅緒は弓をゆっくりと下ろし、落とした刀を拾った。
「紅緒?」
返事はなかった。
彼女は蛇妖の金色の目を見つめ、ほんの一瞬だけ唇を結んだ。
「……遅かった」
その声色は、勝利を喜ぶものではなかった。




