表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/20

ヘンリー-ジョージの鏡

アメリカ合衆国の85年の危機による技術体制テクネイト崩壊に関して本土以外の地域は特に何もかかわることができず、ただその再編を見守るだけだった。


 その後もハワイ、アリューシャン列島、グアムといった仮想敵国であった大日本帝国に近い北太平洋が再編される中でそれ以外の南太平洋は半ば無視されいた。第二次世界大戦の結果として占領された、それらの地域は広大すぎて管理しきれているとは言えなかったがそれでも問題はなかった、前述の北太平洋地域さえ管理できていれば、アメリカの戦略に影響はなかったからだ。


 そうして、1976年のアメリカ建国200周年を過ぎたころ、無視されてきたこれらの島々に光が当たった。きっかけは当時の愛国党政権による、本土中西部での自然保護によって生じる余剰人口の太平洋地域への移住政策が議論され始めたからだった。


 白人にはつらい暑さを乗り越えるために建設された居住地を覆う巨大なドーム(こうしたドームは同盟国のリベリアでは数多く建設されていた)の中での生活はまさにバラ色の未来であり、そこでの幸せな生活が待っているといわれた人々は海を越えてそこに定住することは…なかった。その前に本国での混乱が始まってしまったからだ。


 急進的な改革への反発から、一時は内戦寸前の状態にまで陥るまでにいたったアメリカにそのような政策をそれ以上推し進める余力はなかったし、移住対象とされた人々も本当の故郷を捨ててまでそこに行こうとは思っていなかった。そうした人々にとっては故郷とは太平洋の大海原の中の島々ではなく、グレート-プレーンズの果てしなき大地だった。


 そして、もともとの征服者としてそこに駐屯していた将兵たちの多くは帰国することを選んだ結果としてそこに生じたのは空白だった。そしてその空白を埋めるように"自立"が始まった。"自立"の中心となったのはそこに建設されていた新居住地群を管理していた再定住管理局、通称RAだった。


 元々、第二次世界大戦中より議論されていた、中西部でのダストボウルや水害によって被害を受けたアメリカ人のカナダへの移住を目的に1937年に設立されたものの、カナダ人抵抗勢力の反抗を理由とした軍政を行う駐アメリカ軍部隊との縄張り争いや国民党政権下での融和政策などによってその権限は縮小され続けていたRAにとっては自らの組織の存在意義をかけた一大プロジェクトであり、RAは太平洋地域への移民に対し、早々に管理部門まで自ら立ち上げてしまったほどだった。


 85年の混乱から始まった政府再編の中でRAは解体されたものの、管理部門は民営化の末に残り、16世紀イギリスの哲学者フランシス-ベーコンの著書ニューアトランティスに登場する太平洋上の理想郷にちなみ、ベンサレム-コミュニティ-トラストと名を変えた彼らは独自に活動を続けることになった。


 トラストは、従来の決められた枠での居住者の募集にとどまらず、広く居住者を募った。それを助けたのは彼らと同じアメリカの遺産であるザナドゥのネットワークだった。南国での自由な暮らしという売り文句は多くの人々を魅了し、新居住地群はそれまで不人気だった強制再定住の象徴から、21世紀の新たな生活のモデルケースとして注目されるようになった一方でそうした居住者たちにとってはすべてが思い通りにいったというわけではなかった。居住者たちが所有権の売却を求めたのに対して、トラスト側はあくまでも賃貸という形式に拘った。これは、RA時代からの負債を引き継いだトラストにとっては売却により一時的利益よりも賃貸という形での長期的な利益を必要としていたためだった。


 その根拠として使われたのが、異端のジョージストであるスペンサー-ヒースの理論だった。1876年に生まれ弁護士として働く傍らで可変ピッチプロペラの発明で名を残した多彩な人物であるヒースは自らをジョージストと定義していたもののヘンリー-ジョージによって提唱されたジョージズムとは異なり、国家による地代の分配による単一税の導入ではなく、逆に地主が所有者に土地を貸与し、その価値を維持する限りにおいて地代収入を得ることができるとして地主による地代収入の最大化を擁護するというジョージズムの本流からは外れたまさに異端というべき理論だったが、賃貸を何としてでも維持したいトラスト側からすれば、大義名分としてはうってつけの理論だった。


 そんな、トラストが最も必要としたのは自らに庇護を提供する政府だったが、前述の通り、アメリカは関与を縮小していたため、まずは南のオーストラリア連邦や西の東インド諸島連邦といった同盟国あるいは友好国との接触をはじめた。


 だが、これらの接触を受けた国々にとってもすぐには動けない状況が続いていた。はじめに接触を受けたオーストラリア連邦では長らくアメリカの同盟国として過ごしてきたということもあり、そのアメリカの混乱の影響ははかり知れないものがあり、すぐの行動は難しかった。次に接触した東インド諸島連邦については友好国ではあっても同盟国ではなかったうえに、東インド人の名のもとにオランダ系のみならず元々の現地人もまた共存していた社会であるという点が問題だったことがトラストによって問題視された。なにしろ彼らが作りたかったのは白人のための理想郷であって現地人は不要だったからだった。


 一方で、オーストラリア連邦、東インド諸島連邦、アメリカ合衆国そしてトラストにとっても脅威として捉えられていた大日本帝国においてもジョージズムに基づく変化が訪れていた。

というわけで、アメリカ再編後の現代世界の続きです。


いろいろと変な世界なのでつっこみがあったらどうぞお気軽に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ