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東インド介入(6)

1977年1月12日 イギリス ロンドン ダウニング街10番地

「で、《《アジア人たち》》とインド…ああいや、南アジアの戦いは終わる気配を見せない、と」

「ええ、まったくもってその通りで」

「ここは1つ、我々のほうで動くべきではないのかね?」

「それは…オーラリアその他を動かすべきだと?アメリカの新政権が国内政策重視からの転換を図ってはいないとはいえ、あまりに危険すぎます。加えて言えば、労働党が…その、あの、"極めて政治的な動機"に基づいた軍事介入だと非難する恐れもあります」


 自由党党首でありイギリス首相であるジェレミー-ソープは介入を示唆したがそれに対して外務大臣であるジョン-アレック-ビッグス-デイヴィンソンは言葉を選びながら反対した。2年前に持ち上がったソープの同性愛スキャンダルを労働党は依然として攻撃しており、その批判をかわすための外征であると大きく批判されるかもしれないとデイヴィンソンは言っていたのだった。


「国内は確かに厄介かもしれないが…アメリカのほうは問題がないはずだ。東インド政権からの要請にもかかわらず兵器類の売却から顧問の派遣までのすべてを拒否しているのだからな」

「それは楽観的過ぎる見方では?向こうもこちらの混乱を見て動きを控えているだけかもしれませんし…それに場合によっては南アジアがアメリカの側につくかと」

「たしかに彼らの躍進は目覚ましいがそれはわが大英帝国という構造の上に載っているだけに過ぎない、それをすべて投げ捨ててまでアメリカの側につくことはないはずだ。それにもしも南アジアが去ったとて、いざとなれば反対の側を引き入れるだけですむ」

「それは、《《アジア人たち》》ですか、しかし、そう上手くいくでしょうか」

「もちろんそこまで都合よくはいかないだろうが…だからこそ、そうなる前に介入する必要があるのではないのかね?」

「…なるほど、わかりました。ところで戦力は?」

「まぁ、通常のものでもいいが…情報部の報告によると例のカイァバは厄介だというしな…」


 そういうとソープは思案顔になった。ソープの言うカイァバ、より正確にはカヤバは日本の萱場飛行機製作所のことだったが、近年の軍事関係者の間では日本軍が東インド介入にあたって投入した攻撃用回転翼機のことを製造会社にちなんでそう呼んでいたのだった。


 この攻撃用回転翼機開発のきっかけは満蒙戦争においてアメリカ軍の指導を受けた現地住民のゲリラ戦に対して清国陸軍と義勇日本陸軍が苦戦したことにより、近接航空支援にも使える回転翼機が求められたことから、これに対して萱場が応じたものだった。結局、満蒙戦争には間に合わず、その後は細々と開発が続けられていたのだが、東インド介入において投入されると、対戦車誘導弾を装備した型が東インド諸島連邦軍の虎の子である機甲部隊を壊滅させ、その存在を世界に示した。


 対する南アジア側は当初は空軍による制空権獲得を目指したが、対空誘導弾装備型の攻撃用回転翼機は相手を回転翼機に過ぎないと舐めてかかった南アジア空軍の戦闘機を撃墜し、無視できない損害が出ていたため、南アジアはイギリスに対して防空兵器の供与を要求したが、送られてきたのはスティックを使って誘導弾の軌道を操作するなんとも原始的な携帯型地対空誘導弾だった。これはそもそもイギリス側が自らの制空権のない場所での戦闘をあまり考えていなかったが故のものであり、当然そんなものがまともに命中することはなかった。


 結果、南アジア陸軍からは『大戦中に使っていたポンポン砲の弾の在庫はないのか』と大戦期のものよりも劣るとの辛辣な評価とともに送り返されたが、現状イギリス軍内部でもそれに代わる対空誘導弾などなく、場合によっては思わぬ損害を受けることことも予想された。


「いっそ"星"を動かすのはどうかね」

「さすがにそれは、アメリカの目もありますし…」

「ふむ…だからこそ効果的だと思ったのだが…しょうがないな、例の新型を使おう」


 "星"はイギリスが誇る"公然の"秘密兵器であるワームウッドの星のことを意味しており、各国が整備している地下の防御構造体を無力化できるとされている軌道上に配備されている運動エネルギー兵器であり、ソープは介入においてこれを投入することを検討したが、東インドにおいて中立を保っているアメリカを刺激するのではないかとのデイヴィンソンの指摘を受けて考えを改めた。


 アメリカが開発に成功し、先年の独立200周年式典で披露したステルス機は現状イギリスでも対抗策がないものであり、ただでさえ、リベリアともうすぐ独立が予定されているナイジェリア自治領との間で緊張が高まっているなかで、そのリベリアに対する抑えとして期待されていた南アフリカ連邦では旧来からあるボーア人とそれ以外の対立に加えて北の隣国である中央アフリカ連邦が、


『人種間の平等には反対するが、ボーア化にも反対する』との声明を出したために従来より黒人に融和的であるアングロ系の中心地であったはずのケープ州が孤立することになるなど政治的に混沌としており、そのため現状でアメリカを無理に刺激することは避けたかった。


 だが一方でこのまま東インドの現状を無視し続けることもまた将来的にアメリカの勢力伸長を招きかねないと考えられた、何しろアジアにおいて軍事的には日清両国が、経済的には南アジアが、アメリカに対抗できる力を持った国々であり、その双方が戦いあって得をするのは間違いなくアメリカだからだ。


 こうしてイギリス政府は介入を決断し"東インド介入"は新たな局面を迎えることとなるのだった。

デイヴィンソンは史実だと保守党にいた人物ですがこちらだと保守党が自由党に行ったのとそれ以外に分裂しているのでこちらでは自由党所属です。


ナイジェリアとか南アフリカの話で分かる通り、リベリアは砲声の残響を辿ってほど拡大しないだろうし、南アフリカもボーア人全追放とかはやらかさない…予定です。


あと、南アフリカの領土についてもカクヨム版に合わせて修正しています。具体的にはベチュアナランドにローデシアが併合を求めていた北東部を割譲する代わりに飛び地として政庁が置かれていたマフェキングを含む地域(現実で言うと北西州の大体北部)をケープ州から割譲してたりします。

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