99話
男が言うにはその村はトロールと戦った橋を渡ってから、南に行けば一日で着く距離だという。それを聞いてオーランドとミックたちは果ての山脈に行く進路を変えて、吸血鬼のいる村に向かう事になった。
「くそっこの問題が終わったら、あたしは今後一生魔法使いギルドと関係を持たない。今あのアークメイジを名乗っていたジジイの顔を見たら、剣で真っ二つにしてやりたいよ」
野営の準備をしながら、アンジーがぶつぶつと魔法使いギルドへの恨み言を呟いていた。面倒な頼みごとを託された上に、支援と称して奇怪な人物をパーティに加えられたのだから無理もなかった。リサも同意こそしなかったが、流石にアンジーと同様に辟易している事が、表情から見て取れた。
少なくとも、野営の食事には文句はない程度の質と量は保証されていた。魔法使いギルドは騎士団や冒険者たちの野営に使う装備や食料などの開発も行っている。勿論普通なら高くつくが、魔法使いギルドの支援でタダで供給された。荷物持ちも兼任しているミックにとっては、持ち運びも容易で快適な道具に、熱湯を入れた鍋に一つ入れるだけで十分な量と栄養が取れる食事はとてもありがたかった。対応こそ一方的だったものの、援助そのものは惜しみなく渡してくれた。彼女はそれでも怒りが収まらないようだったが……。
夜間は交代で火の番をする事になったが、珍しくオーランドが自ら火の番を申し出た。
「騎士は三日三晩寝ずの番も出来ねば務まらぬ物。このオーランドが諸君の安眠を守ると約束しよう!」
そういうものの、日中トロールと戦った際の経験から、少なくとも誰か一緒にいないと何をするか分からないため、彼以外の3人が交代で火の番を一緒にする事で、誰かが常にオーランドを見てるように決定された。最初にミックがオーランドと一緒に火の番をする事になったが、すると彼は今まで着ていた甲冑を脱ぎ、その前に跪く姿勢で何やら祈り始めた。
「何をしているんですかオーランドさん?」
「少年よ、騎士はこうして己の鎧を前に、自らの行いとその心を神に祈願をする物なのだ。あの暗闇の空に浮く丸い星は神が我らを常に見下ろしている御眼、だからこうして、信心を忘れていない事を証明するために、祈る姿をお見せなさっているのだ」
ミックも教会の孤児院で育ったから、どちらかと言えば信心深く教育を受けて育ってきた。自分の鎧を見つめて祈るオーランドの姿は、それだけで絵になった。言動はともかく、真面目な人物なのだとミックは彼を評価していた。少なくとも、決して悪い人間ではないと。ただ少しズレているだけなのだと。
暫くして起きたアンジーに火の番を交代するが、オーランドは神に祈っているだけだから、安心してくれと伝えて床に入った。




