100話
次の日、日の出とともにミックは吸血鬼のいるという村に向かった。太陽が昇りきる前にその問題の村にたどり着いた。
村は小規模な集落で、既に畑仕事をしている村人ばかりだったが、皆無言で黙々と作業に取り組んでいて、村全体が静まり返って不気味だった。吸血鬼騒動で皆怯えているのだろう。辛気臭くなるのも仕方なかった。
訪れたミックたちを見る目も不審な物を見る物で、周囲の刺々しい視線を肌に感じた。そんな状態で村長を探す。村の人に尋ねてもきっとまともに受け合ってくれないと思っていたが、ミックたち来訪者の存在に気づいた向こうからやって来てくれた。
「旅の方、こんな辺鄙な村に何か御用で?」
「如何にも、この村にいる吸……」
オーランドが無縁慮に答えようとするのを、アンジーが後ろから蹴りつけて止めた。
「ちょっと問題事を抱えている事を耳にしてね。この騎士様が親切にも解決しようと自らやってきたんだよ。ここじゃ周囲に聞こえちまうから、あんたの家で詳しく話をしようじゃないか」
村長も吸血鬼の事だとすぐに理解し、家まで案内してくれた。
「旅の方々、あんたらは冒険者だね。どうして吸血鬼の事を知っている?」
「最近この村を離れた家族がいるだろう。その家族と会った時に聞いたんだよ。本当に吸血鬼がいるのかい?」
村長は苦々しく顔をしかめた。
「ああ事実だ。あんたたちが何処まで話を聞いたか分からないが、この村は今吸血鬼に悩まされていてね。おかげで村全体が不安でピリピリしている」
「でも、村の人には被害が出てないんでしょう?」
「人間にはな。だが、牛や鶏は生きていくために必要な財産だ。それがいつ吸血鬼に奪われるんだ。たまったもんじゃない」
ミックたちに吸血鬼の事を教えてくれた家族も、大切な家畜が皆殺されたために、村を離れる事を余儀なくされたという。相当な被害が出てるのだろう。
「その吸血鬼の妹がいる兄妹は村とは一切関わらないって言ってたんだろう?」
「兄の方はそう言っていたが、それでも今も被害が出ている。村の外の野生動物も、血を吸われた死体が見つかった話も聞く」
問いただそうにも兄は全く話を聞く気はなく、妹の仕業という確実な証拠もないという。しかし、このまま状況が続けばいずれ何らかの形で深刻な問題が発生する事は目に見えていた。
「私たちなら村の人間でないから、兄妹も話を聞いてくれるかもしれません。その2人が住んでる場所を教えてください」
リサがそう言うと、村長は兄妹の隔離場所を教えてくれた。村から少し離れた林の中に、兄妹は住んでいるという。ミックたちは村長に挨拶を済ませ、吸血鬼の兄妹の住処へと向かった。




