101話
村外れの林を進んでいくと、開けた土地に掘っ立て小屋のような建物がぽつんと建っている空間に出た。建物の隣の農地を耕していた男の姿を見つけたが、あれが吸血鬼の妹がいる兄の方なのだろう。ミックたちの存在に気が付いた男は、持っていた農具をほっぽって小屋の中に閉じこもってしまった。
「これは歓迎は期待できそうにないね」
アンジーがため息を吐く。小屋の入り口前まで行ってドアをノックする。最初の一回目は何も反応がなかった。続けて2回目のノックをすると、扉の向こうから疲れ切った声が聞こえて来た。
「あんたら何者だ? 冒険者とかいう連中だな。どうせ村の奴らが雇ったんだろう。妹は絶対に渡さん! さっさとこの土地から出ていけ!」
取り付く島もないという感じだ。しかし武器を持った冒険者が来たからには警戒するのも仕方のない事だ。
「諸君、ここは某に任せてくれぬか?」
オ-ランドが説得を試みるつもりだろうが、この奇人の事だからまた何かやらかすのではないかと、他の仲間たちは不安になった。
「一応ここは、何か考えがあるオーランドさんに任せてみましょう」
ミックがそう言うと、オーランドは兜を脱いで彼に渡した。そして、少しの間じっとしていた彼だったが、扉に向かって、今まで聞いた事ないような落ち着いた言葉で語りかける。
「妹殿が苦しんでおるのでしょう。某たちは彼女と、貴殿を助けるために遣わされた者である。どうか某たちを信じて、彼女の体調を調べさせていただきたい」
落ち着いた語り口のオーランドの姿を見てアンジーとリサは驚いていた、騎士と名乗るのは変わらないが、相手に寄り添って味方であると思わせるようなt与な話術だ。
返事はなかったが、オーランドの説得が効いたようで、扉が開いてそこには憔悴した表情の男が立っていた。
「流行り病で両親が死んだ後、今度は妹が原因不明の病に罹ってしまった。本当に何とか出来るのか?」
「ええ、このオーランド騎士として困っている民を助けるために全力を尽くす所存」
交渉は成功して
吸血鬼の兄に家の中へ入る許可をいただいた。それ程大きい建物ではないため、オーランドとミックが家の中で話を聞く事にした。
家の中は昼間なのに窓が完全に閉め切られて薄暗かった。部屋の隅に、毛布にくるまった女性が1人うずくまっている。彼女が吸血鬼扱いをされている妹の方なのだろう。
「大丈夫だ。この人たちはお前の病気を治してくれるために来たんだ」
兄がそう言って妹をなだめる。怯える姿は何処にでもいる村娘その物だ。とても吸血鬼には感じられなかった。




