102話
吸血鬼とされる妹は長くぼさぼさの髪で顔が覆われ、手足は骨と皮しかないような程やつれていた。こちらに対して怯える姿はとても、恐ろしい吸血鬼に見えない。
「ここで、2人っきりで生活してるんですか? あまりにその、困窮してそうな生活を送られていそうですが」
兄も妹も、不健康そうな生気の感じられない様子だ。外の小さな畑では冬を越すのも無理なのではないだろうか。
「両親とも病で死んだのも、満足に食事を与える事が出来なかったからだ。村の連中は俺たちを厄介者としてこんな場所に閉じ込めて、何も手助けはしてくれなかった。足りなければ山菜や食べれそうな木の実を探し、小さな野生動物を捕まえて、何とか飢えをしのいでいるという生活だよ」
困窮した生活で、さらに妹は吸血鬼になっているかもしれないという噂まで流れている。村の誰もが助けるつもりはないのだろう。
「少し彼女に触れて診させて貰っていいだろうか?」
オーランドが落ち着いた声音で兄に尋ねる。今まで無鉄砲で時代かかった言動の彼とは別人の様に見えた。妹が怖がらないように今から腕を取るというそぶりを見せて、安心させてから彼女の手を取る。そうして数分彼は彼女の診察を行った。
「それで、妹は大丈夫なんです?」
兄の問いかけににこやかな笑みを見せて安心させる。ただの奇人だと思っていたが、騎士というより医者の様に穏やかで知的な対応ぶりにミックは驚いた。
「ふむ、結論から言うと、彼女は吸血鬼ではござらん。極度の栄養失調で身体と心がちぐはぐに暴れてしまう様になっているのだろう」
妹は吸血鬼ではない! その言葉で驚きと安どの表情が兄の顔からにじみ出ていた。
「薬を飲ませねばなるまい。材料は森の中でも見つかるが、根気よく飲ませるのに量が必要になる。材料は桑の実、ミミズクドングリ、ヒル球根。黒苔。これらを獣脂と混ぜ合わせて煮た瀬せた物を腕一杯分毎日飲ませ、それから少し間をおいて新鮮なカムカム草を搾った汁を摂取させてやりなさい」
あまりに的確に必要な処置を答えるので、オーランドが騎士というより医師に見えて来た。まさか医術で吸血鬼を治す手段が存在するなんて思ってもみなかった。
「難しいだろうが、なるべく集めて飲ませることにする。それで本当に妹の病気が治るんだな?」
「少なくとも試す価値はあると思って貰っても構わぬ。さて、少年。我らも彼女の薬の材料を探しつつ、村人に吸血鬼に家畜が襲われた者たちの話を聞いて参ろうか」
この人は本当に何者なんだろうか? 自分を騎士だと言ったかと思えば、薬草学や吸血鬼に関する知識も備えている。普段の奇天烈な言動と博識な彼、一体どちらが本物のオーランドなのだろうか。




