96話
オーランドは武器を取り出した。扱う武器はハルバードをらしく、長身の彼が持つと様にはなる。ただ、彼の騎士の格好は長旅には向いてない重装備だ。
「者ども聞け! 目に見よ! 某こそは由緒正しきマカブル家の当主にして筆頭騎士……」
長ったらしい口上を述べている最中に、トロールの腕で地面に叩きつけられてしまった。魔物が大人しく聞いてくれるはずもないから当然だが、あまりにあっけなく潰されるオーランドを見て3人は絶句した。
トロールはオーランドを地面にめり込むほどの強烈な一撃で仕留めると、そのまま軽々と彼を持ち上げ大口を開けて彼を丸のみにしようとする。
「わわ、転ばし!」
ミックが慌ててトロールに魔法を放つと、トロールはバランスを崩して尻もちをついた。その際にオーランドを手から離して、放り投げられた彼は近くの茂みに落ちる。
「やれやれ、ほんと勇敢な騎士様だよ!」
アンジーが剣を取り出して駆ける。トロールがミックに食事を邪魔されたのと思い、立ちあがって彼に襲い掛かる。それより早く、アンジーがその頭部を切りつける。
「うおおん!」
痛みに悶絶するトロールだが、今度は標的をアンジーに変えて岩のような拳で彼女に殴りかかった。大振りな動きはアンジーには当たるはずもなく、簡単に身を逸らして回避する。
「転ばし!」
すかさずミックが魔法を放つ。拳を振るったトロールは今度は受け身も取れず、その巨体を地面の上に倒した。そこへアンジーが飛び掛かって、上から剣を口の中へと突き刺してトロールを仕留めた。2人の連携は言葉を交わさなくても、相手の意思をくみ取って最適な行動をとれるようになっていた。
「リサ、あの勇敢な騎士様は生きてるかい?」
リサの方は叩きつけられて、放り投げられたオーランドの救助に向かっていた。すると、茂みからよろよろとオーランドが満身創痍で出て来た。
「いたた……口上中に攻撃するなど卑怯卑劣! このオーランドが成敗してくれる!」
あれほどの一撃を受けて動けるだけでも奇跡だった。戦いは終わった事を告げると、オーランドは悔しそうにしていたが、あのままだったら今頃トロールの胃の中だった。リサは治癒魔法を彼にかけて傷を治す。
「麗しの令嬢よ。このオーランド、手当てをしていただいた恩は決して忘れませぬ! どんな怪物が襲って来ようと貴女を守ると誓いましょう!」
死にかけたのに相変わらずの様子に3人は呆れかえる。本当にこのオーランドは頼りになるのかと。
「トロールの一撃を受けて生きてるんだ。次からは盾役として頑張ってもらおうかね」
アンジーもそう皮肉を言うが、今の戦い方を見る分にはそれが適任とミックも思わずにはいられなかった。




