95話
いざ行かん! 時は一秒も無駄には出来ん! 果ての山脈目指して出発だ!」
オーランドに急かされて、せっかく泊まっていた宿も引き払ってバーズの町をすぐに発つ事になった。
「とんだ厄介事を引き受ける事になるとはね。しかも、あんな奴を押し付けられて……」
人類に大きな被害が出るドラゴンの度重なる来襲。その謎を解くべく、ドラゴンの住処である果ての山脈を目指す事になった。まさかそんな重大な役目を負うとはミック達には想像もしていなかった。
「そういえば、オーランドさんは騎士なんですよね?」
「如何にも! 家名の始まりはドラゴン退治を行った英雄と名高いロラン・マカブル! 某はその子孫なのだ!」
「既に没落したってあのアークメイジは言っていたけれど」
オーランドは既に滅びた騎士の家名を名乗っていると聞いていたが、その一族はドラゴン退治を行った英雄らしい。
「何を言うか! 某がいる限りマカブル家は不滅! それを証明するために家系図をこうして常に持ち歩いているのだ!」
そう言って、古びた巻紙を取り出した。詳しく話を聞いてないが、没落した家の家系図を持っているというのも不思議な話だった。
「見よ! マカブル家6代目に某の名前が載っている。これが某がマカブル家の子孫である証!」
確かにオーランドの名前が一番下に記されている。しかし、それは後から書き足された様に他の記された名前と筆跡が違っていた。
「どうでもいいけど、騎士を名乗るんだから腕は立つんだろうね? 戦いの途中でぎっくり腰になっても、あたしは助けるつもりはないよ」
「無論! ドラゴン退治で名を起こしたマカブル家に恥じぬ武勇、いつでも見せる準備は出来ている!」
丁度、その時街道に架けられた橋を1匹のトロールが塞いでいた。
「おお、某の武勇を見せるのに願ってもない機会! あのトロールを1人で見事仕留めてくれよう!」
そう言って、オーランドは1人先に行ってしまった。ミックは心配でその後を追いかけるが、女性2人は急ぐそぶりも見せず、とぼとぼと後に続いた。
トロールは岩をも砕く怪力と人間よりも倍以上の体格を持つ魔物だ。鉱石や岩石を食する習性を持つが、どういう訳か人間の硬貨が好物で、食べる硬貨を求めて人里に下りてくる事が多々ある。オーガに比べれば動きも鈍重で危険度は低いが、商人たちからは目の敵にされ討伐依頼を出されることも多い。
オーランドの実力を測るには丁度いい相手だと女性陣は思った。オーランドの存在に気が付いたトロールが彼を見下ろす。全身金属の鎧に身を包んだオーランドは、トロールから見ればご馳走が自分からやってきたように見えただろう。舌なめずりをしてトロールはオーランドへ襲い掛かる。




