94話
「もし、この依頼が終わったらあたしはここの領主に魔法使いギルドがやってくれた事を、全部話しておくよ」
「ここの領主には資金援助を受けておるからな。わしらの援助があった事を是非話してくれ」
アークメイジに皮肉が通じてない事も無視して、アンジーはオーランドと向かい合う。
「よろしく頼むよ、騎士の爺さん」
「まだ若いが相当な修羅場をくぐってきたご様子。某も存分に助太刀いたすぞ護衛の戦士!」
アンジーはまだオーランドを信用してないようで、挨拶もそこそこにする。今度はオーランドの方からリサに近づき、膝をついて恭しく挨拶をする。
「見た所、いずれかの名家の令嬢とお見受けする。このオーランド、命に代えても貴女をお守りしよう!」
「ええ……どうぞよろしく」
彼はリサを名家の令嬢と思っているようだ。どう対応したらいいのか困りながらも彼女も返答する。最後にミックの方に顔を向ける。
「幼くして従者をするとは利発な少年であるな! お主も男である以上、女性の事はしっかりと守るのだぞ!」
「は、はい頑張ります!」
ミックをリサの従者と勘違いしているようだが、ミックも真面目なため彼の言葉を真に受けて返答する。女戦士に転ばし魔法を使う少年、才能あふれる女性魔法戦士のパーティにまた個性的な仲間が加わった。
「では行かん! 時間は待ってはくれないものぞ。果ての山脈目指して出発だ!」
「ちょっと、何で新入りのあんたが仕切ってるんだい!」
勝手にギルドから出発しようとするオーランドをアンジーが追いかけて諫める。
「ところで少年よ」
2人の後ろ姿を見ていたミックは突然アークメイジに話しかけられて驚いた。
「え、あ、はい何でしょう?」
「お主の魔法、かなり古い体系の魔法とこちらには情報が入っているが、あまり軽々しく使うのは控えた方がいいぞ」
アークメイジから直々に助言を受けてミックは驚いた。
「古代魔法は現代の魔法と違い、体内の魔力を使う事が多い。魔力が枯渇した場合、魔力の代わりに別の物で力が行使される」
「何が代わりに使われるんです?」
「それは己自身の生命力」
アークメイジがそう答える。ミックの転ばし魔法は使い過ぎると、魔力の代わりに生命力が使われてしまうのだという。
「空気中の魔力と元素を使う現代の魔法使いでも、魔力が切れたら疲労で動きが鈍る。生命力を使う古代魔法は、下手をすると命に関わる」
魔法の専門家が言うのなら間違いないのだろう。ミックの転ばし魔法は意外にも危険な魔法らしい。
「それだけはおぼえておけ。そして戻ってきたら、改めてその古代魔法の研究をさせてくれよ」
アークメイジはそれだけ言うと戻っていった。ミックは頭の片隅にその言葉を残しておき、アンジーたちの後を追う事にした。




