93話
「うむ、そうかそうかやってくれるか。頼んだぞ英雄たち」
「ところで、あんたの運命なんやらで、あたしたちがこの依頼を達成できるか分からないのかい?」
「聞いてどうする? もし受けた依頼を失敗すると分かったら撤回するのか? そんな事で冒険者とやらが務まるのか?」
その口ぶりから恐らく、成功するとは思ってないのだろう。無理難題を押し付けられたようなものだ。
「そう答えを急くな。わしら魔法使いギルドもちゃんとお前たちを援助する。まずはついてまいれ」
アークメイジはそう言って立ちあがると部屋から出るつもりのようだ。急いでミックたちもその後を追う。彼らが立ちあがると椅子は独りでに部屋の隅に移動する。
「ここからは私が彼らを案内する。お前は自分の職務に戻れ」
部屋の外で待機していた女魔法使いにそう言い残して、先ほどミックたちが昇ってきた空洞をひょいと飛び降りた。ミックたちは少したじろいだが、意を決して自分たちも飛び降りる。
すると、まるで羽のようにゆっくりと下降していく。そのまま落ちたら重賞はまぬがれない高さを、魔法の力で無事に1階まで降りる事が出来た。
「こっちだ」
そして、アークメイジは中庭にまで行くと、きょろきょろと周囲を見回して誰かを探し始めた。
「おった、おった。オーランドよ、こっちへ来い!」
そう呼ぶと、まるで騎士の様に全身甲冑を着込んだ1人の老人がやってきた。
「どうなされた魔法使い殿よ! オーランド・マカブル、今ここに参上つかまった!」
言葉遣いも古めかしい老人だが、背は高く身体は細身、おとぎ話から飛び出してきたような騎士然とした人物だった。
「うむ、ついにお前の出番が来た。この者たちと共に果ての山脈へ向かい、ドラゴンについて調査をしてくるのだ」
「了解です! 騎士としてこのオーランド、例え髪の毛1本になろうと依頼を完遂して戻ってくる所存!」
そう言って、オーランドはミックたちを見やる。
「ふむ、護衛の兵士に麗しい令嬢、それに小間使いの従者かな? 某が護衛に加われば100人力よ。以後お見知りおきを調査団の方々!」
「ちょっと、この爺さんは何だい?」
「自己紹介の通りこの者はオーランド・マカブルという騎士だ。自称だがな。ギルドから彼奴を護衛に送る」
自称騎士とはどういう事だろうか。
「マカブル家という50年以上前に没落した騎士の家名を名乗って、この辺りの地域で自警団の様な事をしていた男でな。興味深くてギルドで護衛騎士という名目で雇い入れて、その動向を調べていたのだ」
明らかに不審人物なこの老人を、魔法使いギルドは助っ人としてミックたちに同行させるつもりらしい。




