92話
「まあその事で、丁度最近ドラゴン退治を行った君たちに、その原因を調査して欲しいわけだ」
まるでついでに頼む程度の気軽さで、アークメイジはドラゴン連続発生の調査を頼んできた。
「そんな大事件が分かっているなら、どうしてみんなに伝えないんですか!?」
「言ったところで俗人共はまともに取り合わないじゃろう。あくまでこれはわしの予測に過ぎず、ドラゴンの生態もまだ謎も多いのでな。君たちにはある場所へ向かい、もっと詳しく情報を集めて欲しいのだ」
「ある場所?」
「名前くらいは聞いた事があると思うが、東にある果ての山脈という場所だ」
リサは聞いた事があった。東方に幾度も調査隊が向かって、誰一人帰ってこない領域があると。そこから東は歴史上誰も見た事のない土地が広がっている。人類にとってそこが終着点とされる場所、そこが果ての山脈。
「唯一分かっている事は、そこがドラゴンの群生地だという事だけ。ほぼ全てのドラゴンが、どういう目的かでそこから様々な地域へ飛んでくる。そこへ行って、ドラゴンについて調べてきて欲しい」
人類未踏の地へ向かいドラゴンの情報を集めてくる、それがアークメイジの依頼。しかし、それは言い換えれば死地に言って欲しいという事と変わらなかった。
「簡単に言ってくれるね。これまで誰も生きて帰ってこなかった場所へ行けだなんて」
「ドラゴン退治の英雄ならそれぐらい頼んでもいいではないか? わしら魔法使いギルドは忙しくて、そこまで手が回らんのでな」
「人がたくさん死んじゃうかもしれないのに、忙しいの言葉だけで済む問題じゃないでしょう!」
ミックが怒りにも似た声を上げるが、アークメイジは全く他人事のように言う。
「環境変化や病の流行など、生きていればそうした自然の悪戯で、生物が絶滅したりすることもよくある事。それよりもわしらには真理の追究という目的があるのでな。いちいち人類のために動いている暇などないわい」
魔法使いはみんなこういう考えの人たちばかりなのか。3人はあまりの非常識ぶりに皆、顔をしかめるしかなかった。
「しかし、研究するための資金も出なくなるのは惜しい。だから君たちに頼んでるわけじゃ。勿論、そのための手助けなら出来る限りするぞ?」
「正直な所、あんたら魔法使いギルドの為に働くつもりはないけれど、他の2人はどう思う?」
アンジーが横にいる2人を見る。
「僕は行きます。魔法使いギルドじゃなくて他の人たちの為です!」
「私はこういう考えを改めさせたくて魔法使いギルドに入りたかったの。当然行くわ」
「なら決まりだね。その依頼、引き受けるよ」
3人の心は1つだった。果ての山脈でドラゴンの調査をして、人類への被害をなくす。その為にこの無謀な依頼を受ける事にしたのだ。




