9話
「東の森にグリズリーベアが出たって? あそこはそんな危険な場所じゃ……」
ギルド職員が信じられないといった表情を見せる。しかし、アンジーは顎でミックの担いでる証拠の首を指して見せる。
「証拠の首もある。それに、この小さな相棒が言うには、まだ新人の冒険者がそいつに襲われてたってよ。いずれ証人として出てくるだろうさ」
周囲の冒険者たちもざわめく。やはり、グリズリーベアが東の森に出たという事に、彼らも驚いているようだった。
「注意喚起を出そう。東の森はギルドで調査してみる。しかし、あんたがまた冒険者を始めるなんてな……」
ギルド職員はアンジーの事を良く知っていそうだった。ギルドの建物に入った時も、冒険者たちが彼女の名前を口にしていた。とても有名そうだったが、何故、自分の様な少年とパーティを組んでくれたのかミックは不思議に思った。
「つまんない話はいいから、ちょっと肩慣らしにゴブリン共の討伐依頼を受けさせてもらうよ。それと、グリズリーベアの分も一緒に報酬を用意してな」
討伐依頼の依頼書を乱暴に掲示板から剥がすと、そう言ってギルドを出ていく。ミックも慌てて彼女に付いて行く。
「あの、どうして今更ゴブリン討伐を?」
グリズリーベアを一人で倒せるアンジーの実力なら、ゴブリンなんて相手にならないはずだ。
「これはガキンチョ、あんたの訓練用の依頼だよ」
アンジーはそう言った。そして、念を押すようにミックに顔を近づけた。
「いいか、あんたが魔法を使える事を知っているのはそういない。せいぜい追い出されたパーティの連中位のはずだ。そしてこれからも、その事は他の奴らにばらしちゃいけないよ」
そして、彼女がどうしてミックに目を付けたのか分かった。
「いいかい、ガキンチョ。あんたは普段通り荷物持ち役として振舞いな。だけど、戦う時はその魔法であたしを援護するんだ。魔物が攻撃してきた時、一瞬でもいいからその魔法で相手に隙を作るんだ。そうすれば、あたしは攻撃に専念できるからね」
アンジーはミックの転ばし魔法を利用するつもりなのだ。彼女が何時、ミックの転ばし魔法を使える事を知ったのか不明だが、その有効活用法を閃いたのだろう。だから一人になったミックに目を付けて、彼とパーティを組むことにしたのだ。
「ゴブリンと戦う時、相手の動きをよく見るんだよ。向こうが攻撃しようとした瞬間に、あんたの魔法で妨害するんだ。それだけで後はあたしが魔物を始末する。簡単なお仕事だろう?」




