10話
ゴブリンを使ってミックが魔法を使うのを練習するために、南の遺跡へ2人は足を運んだ。古代の魔法使いが何らかの儀式をするために造ったと思われる建造物跡だが、ゴブリンは不思議とこういう遺跡に集まる習性がある。歴史学者や魔法使いがその遺跡について詳しく調べるのに邪魔になる上、数が増えて他に被害を出さないように度々討伐依頼が出される。
「その、大丈夫なんですか? もし僕が失敗して、ゴブリンの攻撃を受けたら……」
「小鬼どもの攻撃位ならあたしは受けても致命傷にはならない。だけど、痛い事は痛い。もし傷を受けたら報酬から傷薬の代金は引くからね。真面目に練習するんだよ!」
そう言われて、ミックは真剣になった。報酬が少なくなるのも嫌だが、自分のせいで誰かが傷つくのも嫌だ。アンジーが攻撃を受けないように、しっかりとその役目を果たすつもりだ。
遺跡は石柱や擦れて殆ど分からない魔法陣が描かれた床石などが残った小規模な場所で、学者たちからしても殆ど重要な物ではないと判断されている。だから、ほとんど人が来ることはないが、それとは無関係にゴブリンは集まってくる。
二人が着いた時、3匹ほどのゴブリンがいたが、何のためにいるかは全く興味がなかった。そういうのは冒険者ではなく学者たちの仕事だ。向こうの一匹がミックたちに気が付くと、替えを上げて仲間を呼び集めた。原始的な木で作られたこん棒を持って、こちらに敵意を向ける。
「じゃあやるよ。あたしはあんたが魔法で動きを止めた奴だけを倒すから、あいつらの動きをちゃんと把握するんだよ」
「もし、僕を狙ってきた奴がいたら?」
「自分の身は自分で守りな。それともあんたを魔物の群れの中に投げ込んだ方が、魔法で動きを止める練習になるかい?」
アンジーは冗談のつもりで言ったのだろうが、ミックはゾッとした。そんな恐ろしい目に合うのはごめんだ。そんな事をされないように、しっかりと魔法で彼女を補佐しようと思った。
彼女は悠然とゴブリンたちに向かって行く。向こうは声を上げて威嚇するが彼女は全く動じていない。一匹が武器を振り上げて彼女に襲い掛かった。持っている武器を振りかぶった瞬間、ミックは指先を魔物に向けた。
「転ばし!」
ゴブリンはアンジーの前で武器を振りかぶった勢いそのままに尻もちをついた。何が起こったのか魔物も分かっておらずぽかんとしてる。目の前で隙を晒すゴブリンに、アンジーは剣を突き刺した。幅広の剣が身体を貫通し、声を上げる間もなく魔物は息絶えた。
「最初にしちゃあ上出来だ。こうやって魔物が攻撃するのを防いでくれよ?」




