87話
見つけた宿屋も佇まいは立派な建物だった。一回の食堂部分は町の人が殆どで、冒険者はすくなそうだった。
「同業者の殆どは冒険者ギルドの安宿と酒場にしかいないだろうね。雰囲気が全然違ってお上品そうな連中ばかりだ」
「冒険者ギルドは町の外にあったわね。まあ中にはごろつき同然の連中もいるし、そういう野蛮な奴らは縁がない場所よ」
アンジーがじろっとリサを睨みつける。険悪そうになる前に急いでミックが間に入る。
「とりあえず魔法使いギルドへ行きましょう! その予約を取って、その後でゆっくり町を観光しましょう!」
何とか意識を外に向けて、言い争いが起こるのを避けてミックたちは魔法使いギルドを目指した。建物自体はすぐに見つかった。町の中でも目立つ高い大きい塔、その入り口にかけられた看板は中心に白い円が加えられた色分けされた六角形のシンボルマークが掛けられていた。これが魔法使いギルドを表すシンボルマークらしい。
中に入ると、思ったよりも質素で狭い受付があった。しかし、冒険者ギルドの様に肝心の受付の係員が誰もいない。紙と羽ペンとインクが置かれているだけで、誰もミックたちを迎えない。
「おい、誰もいねえじゃん。どうやってギルドのメンバーと面会の予定を取り付けるんだよ」
「そこの紙に面会したいメンバーの名前と要件を書いて置いておけばいいのよ。ちゃんと返事は今日中に帰ってくるはずだから安心して」
返事の内容についてリサは言わなかったが、場合によっては拒否される可能性もあるのだろう。しかし、常に研究や修行を続ける魔法使いはとても忙しいとは聞いている。時には上流階級が政治や問題事の解決策を相談しにくるほどらしい。冒険者とは別ベクトルで忙しいそうだ。
「あなた達はギルドから親書が届いているのよね? その持ち主に面会したい旨を書けば、今日中に受理されて答えが返ってくるはずよ」
「そもそも呼んだのは向こうのはずなのに、出迎えてねぎらいの言葉の一つも欲しいくらいだぜ」
冒険者ギルドのルールとは全く違うため少々面食らったが、とりあえず予約の取り付けを行っておいた。『お呼びされてきましたカペー地方のドラゴン退治を達成した冒険者のミック・リングストンとアンジーという冒険者です。この日、バーズの町まで足を運んだ次第ですので、運命魔法師アロンソ師に是非面会をお願いしたいと存じ上げます』
そう書いて指定の箱に投函すると、不思議な事にいれた紙が鳥の形に折り曲がり、まるで本物の鳥のように窓から飛んで行ってしまった。
「多分これで届く、はず。後は返事待ちね」




