86話
カイナドからの関所を越えて、さらに街道を進んだ先にミックたちが目指すバーズの町が見えて来た。町の外には畑が広がり、如何にバーズが豊かな都市であるか分かった。
「凄いです。町の外なのに農地がたくさん広がってる!」
「こんなに開放的なのも、魔物の襲撃には殆ど怯えることなく済んでるんだろうね。こういう所の方が冒険者の依頼も多そうと思ったけど、考えを改めないとかね」
「きっと魔法使いギルドがあるのも理由の一つね。だから安全に暮らす事が出来るのよ」
思い思いの感想を言いながらバーズの町へ向かう。ミックたちの住む地域ではほとんど見られない景色で、それを目に焼き付けるかのように見渡す。バーズの町自体は壁に囲まれていて、内部はまた外とは全く違う光景が広がっていた。
歩道は石で敷き詰められ、並ぶ建物も丈夫そうな石造りの物ばかりだ。中でも目を引いたのは歩道に一定の間隔で並ぶある物だった。
「アンジーさん見て下さい! これなんでしょう?」
「あたしも見た事ないわ。鳥の止まり木かしらね。何でこんな道に点々と置いてあるんだ?」
2人が物珍しそうにそれを見ている様子を、周りの人々がおかしそうに笑う。傍から見れば如何にも田舎から出て来た庶民にしか見えない。リサが慌てて2人を引き離す。
「あれは街灯。夜になったら明かりが灯る物よ。だからバーズの町は夜でも安心して出歩ける位治安がいいの」
「明かりが点くんですか! 僕が知っているろうそくや松明とは全然違って、町中にたくさんあるのに、全部に明かりが点くんですか?」
「中に魔石が仕込まれていて、少しの魔法で簡単に付けたり消したり出来るのよ。魔法使いギルドの発明ね」
夜でも自分で明かりを持つ必要がなく、町を歩き回れるなんてやはり魔法の力はすごいとミックは思った。
「話には聞いていたけれど、本当に存在するなんて思わなかったよ。こんなにあるなら中の魔石一個くらい取ってもいいんじゃないか?」
「魔法道具の窃盗は重罪よ。冗談でも軽々しく言わないで頂戴。衛兵が聞いていたらすっ飛んでくるわよ」
物騒な事を言うアンジーにリサが釘を刺す。聞いてる人がいなくてよかったとミックは思った。
「2人が何かやらかす前に魔法使いギルドへ行きたい所だけど、まずは宿を取っていた方がいいわね。ギルドの中に入るのは事前に予約取って無きゃだから」
「外にも宿屋があったけれど、町の中で宿を取ろう。あたしらはこう見えてお金には困ってないからね。少しでも上等な宿に泊まりたいだろう?」
ミックはもっと町の中を見て回りたかったが、まずは宿を取って寝る場所の確保が先だった。宿屋もきっと高級なのだろうと期待に胸を膨らませた。




