84話
「そして一般的には、元素魔法に対する素質は1人1つが普通。勿論、修業を積めば他の元素魔法も使えるようにはなるけれど、元々向き不向きがあるように魔法にも向き不向きがある。一般的には、ね……」
そう言ってリサは右手を広げると、小さな竜巻を掌で発生させた。
「御覧の通り、私には風の元素魔法を使う素質もあるの。自慢するわけではないけれど、複数の魔法の素質を持つ人間はほとんどいない。それこそドラゴン退治出来る冒険者くらいにね」
ただでさえ魔法の素質を持つ人間は限られている上、さらに別の元素魔法を使える人間はさらに限られている。ネクロマンサーたちが彼女を仲間に加えていたのも分かる気がした。
「元素魔法が複数使えるというのは単純に使える魔法が増えるだけじゃなくて、元素同士を組み合わせてさらに独自の魔法にする事ができるの」
彼女が亡者を一掃した火炎流がその1つだった。炎の渦を風で自在に操り、あらゆる物を焼き尽くす。その気になればたった一人で軍隊も制圧できる程だという。
「そんなに貴重な人材なら、魔法使いギルドもすぐに認めてくれそうだけどね」
「実は師匠、だった人の下で指示を受けていた頃の私は、風魔法も実用化できそう位の認識しかなかったの。記憶を弄られていて、幻術が解けるまではその事すら憶えていなかった」
恐らく、彼女が完全に自分たちの同志になるまでは、彼女の力は強力過ぎるとネクロマンサーたちは判断したのだろう。
「もし、今の火魔法に加えて風魔法も使えたら……そういう体であの人は火炎流の事を教えてくれていた……」
リサの表情が暗くなる。師匠だと尊敬していた人が実はネクロマンサーで、両親の仇だったのだから無理もない。ミックは慌てて話題を変える事にした。
「でも、やっぱり魔法って凄いですね! 元素魔法だけでなく、傷を治したり物を動かせたりも出来るんでしょう?」
「治癒魔法なんかはある意味人間そのものを触媒にして、魔力で再生力を高めてるのよ。魔法の素質がありさえすれば、元素魔法とは別に使う事が出来るわ。勿論、修業は必要だけど魔法使いじゃなく聖職者を目指すなら使える事に越したことはないわ」
「僕がいた孤児院の神父様も、治癒魔法の心得がありました。そのお陰で僕が転ばし魔法を習得するのに、魔法の使い方について知識を教えてくれたんです」
治癒魔法は単純に怪我を治す他に、死者の身を清める事にも使われる。必ずしも聖職者に魔法の素質は必要ないが、冒険者から治癒や解呪を求められる事も多い。ミックが魔法に興味を持ったのも育ての親である神父様の、魔法を使う姿を見てきた事が大きな理由だった。




