80話
幼い頃の僅かな記憶。まだ両親と共に生活していた時、私は既に魔力の存在に気づいていた。空気中に漂う魔力を、私は感知する事が出来た。本来、魔法使いの素質がある者でも魔力完治などの魔法を使わなければ認知できないらしいが、私は誰に教えられる訳でもなく感じる事が出来た。その事を周囲に話すと気味悪がられ悲しい思いをしたが、両親は私の話を信じてくれた。
「リサにはきっと魔法使いの素質があるんだ。それは凄い事だから自信をもっていいんだよ」
「あなたがもっと大きくなったら、町に行って魔法について誰かから教えてもらいましょう。それまでにお金を貯めておくからね」
その両親の言葉で、私は魔法使いを目指そうと思った。そして、魔法で両親を喜ばせてあげたい。そう思った矢先に事件が起きた。ネクロマンサーの一味が、ドラゴンの襲来に乗じて村を襲った。ドラゴンの影響で凶暴化した魔物の仕業に見せて村人を攫い、自分たちの魔法の実験に使おうとしたのだ。両親が殺され、私も殺される直前だった。
「待ちなさい。この子供から大きな魔力を感じます。これ程の魔力を持つ者はそういません。貴重な逸材です」
ネクロマンサーの1人が私の素質に気が付いた。そして、私を生かして様々な魔法を授けた。私が師匠と呼んでいた男だ。彼は私に幻術を使い記憶を改ざんして弟子とした。村は魔物に襲われ、彼に助けられたと。彼がよく撫でていてくれたのも、幻術をかけなおして私の記憶を変えたままにしておくためだ。両親の仇を今まで師匠と呼んで尊敬していた……目の前にいながら、その事を10年も騙され続けていた。
彼は私の幻術が解けないように用心深く魔石の耳飾りを使って、私の記憶を改ざんし続けた。これまで私に見せて来た師匠としての姿は全くの偽物で、私はそれに気づかずにずっと一緒に過ごしていたのだ。魔法使いになろうと魔法使いギルドに入る事を目指しながら、魔法の素質のない者を見下していた。道化もいい所だ。そんな自分が愚かで憎くて腹立たしかった。
どうして自分が魔法使いを目指していたのか、その理由を忘れた偽りの記憶で生きて来た。今更魔法使いを目指すなんて……。
「リサさん、身体の調子はどうですか?」
ミックという少年が戻ってきたようだ。私は泣きそうだったのを慌てて隠した。
「酒場に行ってきたんですが、僕にはまだ早かったみたいで先に戻ってきました。お身体は大丈夫ですか?」
「大丈夫、ありがとう。あなたのお陰で私は記憶を取り戻せたの。礼をしたいんだけれど、私にはもう何もないからどうしたらいいか……」
「お礼なんてこっちが言いたいくらいですよ! リサさんの魔法のお陰で僕たちは助かったんですから! リサさんはきっと凄い魔法使いになれますよ!」
ミックはそう言って笑顔を見せてくれた。私のお陰? でも、あれはネクロマンサーに教わった魔法で、正しい物ではない。
「私はネクロマンサーに魔法を教わってたの。だから、私もその仲間の様なものよ。きっと魔法使いギルドは許さないわ」
「そんなことありません!」
ミックは手を握って私に言った。




