78話
「勿論ですよ! いいですよねアンジーさん?」
「まあガキンチョが頼むなら仕方ないね、あんたをあたしらのパーティに加えてやるよリサ」
アンジーがわざとらしく尊大に振舞った。
「よろしくね、アンジーさん。 私の魔法の知識と腕を見て腰を抜かさないでね!」
そう言って2人は大きく笑った。また険悪になるかと思ったミックだったが、どうやら杞憂で終わりそうだ。2人のパーティにリサという魔法使いが新たな仲間として加わった。彼女の強力な魔法とその知識はとても頼りになるはずだと思った。
「ここから一番近い魔法使いギルドのある場所は分かる?」
「いいえ、そういえば僕らは全然知らないで旅をしてました。見つからなければ今いる町の酒場で情報を集めるっていうのが、アンジーさんの考えでしたから」
「酒場で情報収集は冒険者の基本だからね。酒も飲めるし、一石二鳥だよ」
あまりにも場当たりすぎな考えに、リサは呆れたように言った。
「カイナドから北東の関所を越えれば、バーズという町があるの。そこは昔から魔法の研究に適した良質な魔石が採れる事で有名な鉱山街なの」
つまり、その研究をしている魔法使いギルドの支部があるはずだ。ネクロマンサーの事件を解決したら、彼女はそこで魔法使いの正式な認可を貰うつもりだったのだろう。
「そうなんですか! それじゃあリサさんの体調が良くなったら早速その町を目指しましょう!」
「ちょっと待っとくれよ。まずはこの町で情報収集してからの方がいいだろ。そのバーズとかいう町について、酒場で!」
アンジーはどうしても酒場に行きたいようだ。これにはミックもリサと同じく呆れたように笑った。
「行きたければどうぞ行って来ればいいわ。少なくとも私はまだ今日1日ゆっくりしたいから。ミックも自由にしてていいわよ」
意外にカイナドを見て回る事を許してくれたリサに疑問を持ったが、それを聞こうと思った時にはアンジーに腕を引っ張られていた。
「そうかい! じゃあ遠慮なくガキンチョと一緒に酒場で情報収集に行ってくるよ。お元気で!」
そう言ってアンジーはミックを連れて部屋を出る。そこでミックは彼女に聞いた。
「リサさん、あんなに急いで魔法使いになりたかったはずなのに、どうして認めてくれたんだろう?」
「ガキンチョ、あんたは肝心な所で鈍いねぇ。師匠がネクロマンサーで、自分を何年も欺いていたんだ。心の整理が必要なんだよ」
そう言われてようやくミックは悟った。今のリサはただ魔法の使い過ぎで疲労しているだけでなく、育ての親でもある魔法の師匠にずっと騙されていた事を知ったのだ。1人でその事と向かい合い、受け入れる時間が彼女には必要なのだ。
「というわけで、あたしらは彼女に時間をやらなきゃね。さ、酒場に行って一杯やるよ!」
そう言って、アンジーに抱えられながら、ミックもカイナドの酒場に行くことになった。




