74話
「おらぁ!」
戦士が斧で亡者の胴体を打ち付ける。そのまま吹っ飛ばされた亡者は背後にいた仲間にぶつかると、そのまま連鎖するように倒れる。
「風の刃!」
魔法使いが魔法を唱えて手をかざす。その先にはリサの師匠がいるが、手前にいる亡者の群れに遮られてしまった。数体の亡者が横一列に真っ二つになる。しかし、上半身だけでハイ進んでくる。
「流石に数が多いねえ! だけど、魔法の主を叩けば!」
アンジーが高く跳んで亡者の肩や頭の上を蹴りながらリサの師匠に向かって行く。
「はあ!」
そのまま剣で突き刺そうとするが、その直前、男の背後から巨大な塊が飛び出て来た。
「アンジーさん!」
吹き飛ばされたアンジーは間一髪で攻撃を防いだが、地面を転がって倒れる。
「見てみなさい。これぞネクロマンシーが生み出した芸術!」
それは多数の死体の肉と骨を集めて造られた巨人だった。そのおぞましさは元より、魔物のトロルやオーガすら凌駕する巨体だった。
「この肉の巨人を数体造れば、軍隊どころかドラゴンすら倒せますよ! これぞネクロマンシー、素晴らしいでしょう!」
動く度に肉の潰れる音と骨の砕ける音が聞こえてくる。これが相手のとっておきの兵器なのだろう。亡者の群れに死体で造られた肉の巨人。この醜悪でおぞましい亡者の群れに追い詰められていく恐怖で、ミックたちの動きが止まる。
「教えてください師匠」
リサが目を覚ました。既に幻術も解かれていて、今まで歪まされていた記憶も認識も元に戻っている。
「おお、目を覚ましましたかリサ! さあ私の所に戻ってくるのです!」
師匠が声を上げて手を差し出す。しかし、リサには聞きたいことがあった。
「教えてください師匠、あなたは私の村を襲って、私だけを引き取った。それは何故です?」
「それは勿論あなたには魔法の才能があったからですよ。あの時、私は貴方の素質に価値を見出し、その意識を教えてきた。それは本当の事ですよ」
彼女の魔法の素質、それに目を付けて記憶を改ざんしてまでリサを弟子にしていた。わざわざそうしてまで彼女を連れていたのは、本当に彼女には魔法の素質があったのだろう。
「あんな田舎の農村で一生を終えるには惜しい才能だった。あなたにはもっと素晴らしい価値があるのです」
それを聞いてもミックには納得出来なかった。その価値は果たして本当に他者を犠牲にしてまで持ち続ける意味がある物なのだろうか。
「そんなの間違ってますよリサさん!」
ミックが彼女に向かって叫ぶ。




