72話
「僕は大丈夫です! 彼女を助けるためなら……」
火花がミックの頬に飛んで来た。その衝撃で僅かに頬から血がにじむ。
「気を付けて! 属性に頼らないで魔力を放出する事自体がイレギュラーなの! 集中力を切らさないで!」
耳飾りの魔石も暴れながら溜まった魔力を放出し続けている。相当量の魔力が込められている様で、数分ミックの転ばし魔法をかけ続けているが、まだ枯渇する気配はない。
指先がチリチリと痛み出した。もしかしたら魔力が切れ始めたのかもしれない。しかし、ミックは辛抱強く魔力を流し続けた。
「もう少し、もう少し……!」
すると、耳飾りに使われていた魔石が軽い音と共にはじけ飛んだ。
「魔石が割れた! これでもう安全だわ!」
全身に重りを付けたようにミックの身体を疲労感が襲う。でも、彼女にかけられていた幻術もこれで解く事が出来るはずだ。
「良かった……」
「ミック、大丈夫かい?」
ミックはその場に座り込む。かなりの魔力を使ったが、彼女が助かるなら使い切っても構わなかった。ミックにとって両親がいないと言っていたリサは、年こそ違うけれど同じ境遇の仲間の様な親近感を感じていた。
「僕はまだ平気です。多分あと1回か2回くらいは魔法が使えるくらい残ってます」
そう会話してリサが目覚めるのを待つつもりだったが、アンジーが一早く異変に気付いた。
「臭いね。これは腐臭……奴らか!」
今いる空間のさらに奥に続く通路から、ぞろぞろと死体の群れが現れた。その中心にはリサの師匠の姿があった。
「何て事でしょう。魔石の装飾品はとても貴重だったのに……彼女を守る魔法が破られるなんて……」
「やっぱり、あんたもネクロマンサーの一味だったんだね! 魔法使いギルドの一員だなんてせこい嘘つきやがって!」
「嘘ではありませんよ? 私が魔法使いギルドのメンバーで、彼女も正式に魔法使いギルドに入れたかったのは本当なのですから」
リサの師匠はそう嘯く。しかし、それならこんな回りくどい事を? ミックは疑問に思った。
「彼女には素質がある。しかし、魔法使いギルドはネクロマンシーを禁忌とし、閉鎖的な考えとやり方に拘り続けている。ご存じでしょう? それを変えるために、彼女のような新しい魔法使いをもっとギルドに入れて、内部から変えていくつもりでした」
「内部から変える? 腐らせるの間違いじゃないのかい。都合のいい操り人形を使って、裏から操ろうなって魂胆だろうゲス野郎め!」
アンジーが嫌悪感を表にする。リサの師匠のやろうとしてる事は、彼女が言う通り卑怯な手段だ。




