65話
カイナドの町から2,3日歩いた辺りに村があるが、その村周辺の森林にネクロマンサーの隠れ家があるという情報が入っている。カイナドから近いため、敢えて近場の村で墓荒らしを行わなず隠れ家の存在を晦ましていたのだろう。恐らくリサたちも、そこにいる可能性が高かった。
森林は日中でも薄暗く沼地がそこら中にあるため、じめっとしていて不快な場所だった。好き好んでうろつく人間はいないだろうし、隠れ家を作るにはうってつけだろう。
「奴ら、こういう人が足を踏み入れない土地で、禁忌の研究をしてるんだ。恐らくどこかに洞窟でもあって、そこを拠点にしているはずよ」
魔法使いの女性がそう言ってパーティの前に出る。
「魔力探知」
そう唱えると、魔法使いの指先から小さな光球が放たれ宙を漂いながらどこかへ向かって行く。
「妨害の幻術でも使ってなければ、これを辿っていけばネクロマンサーのいる場所へ行けるはずよ」
彼女の言う通りに、パーティで光球の後をついて行く。
「しかし、こんな人気のない不気味な場所で、しかも洞窟なんかを隠れ家にするなんて、ネクロマンサーは魔物みてえな連中だな」
ふいに戦士が呟く。確かにミックも魔物討伐の依頼を受けたら、こういう場所に潜む魔物を狩りに度々来たことがあるのを思い出した。
「そっちの方が都合がいいのよ。魔物が出ると思えば近くの村人は寄り付かないし、実際に魔物がいたら実験に使う死体が増える。あいつらは魔物だってネクロマンシーに使うのよ」
そう聞いてミックはゾッと背筋が寒くなった。ネクロマンサーにとっては魔物も実験の対象である事に。もしかしたら、今度は魔物の死体も使役してくるかもしれない。複数の魔物の死体を操るネクロマンサーはやはり脅威となる。禁忌扱いされるのも当然だ。
「おい、今度は魔物の死体が襲ってきたからと言って逃げたら、その時は一生笑い者にするからね」
話を聞いていた戦士を見て、アンジーがぼそっと呟いた。
「ば、馬鹿野郎! 俺様がそんな事するわけねえだろ……!」
「ちょっと、勘弁してよ。戦えない戦士なんて役立たず以下だわ。そこの荷物持ちの子供の方がまだマシよ」
「へん! 大体魔法なんて訳の分からない物を使う方がおかしいんだよ! しかも死体を操るなんざ罰当たりな事ありゃしない!」
「一緒にしないで、そもそも魔法は学問よ? 素質のある選ばれた者しか使う事の出来ない崇高な物なんだから……」
そう言って言い争いが始まる。このパーティで本当にネクロマンサーと戦えるのか、険悪な様子を見てミックはどんどん不安になっていく。




