63話
「あれ、私……」
リサはふと辺りを見渡した。見覚えのある部屋……ここはカイナドの宿だ。ここで墓荒らし、ネクロマンサーが現れる村を予測して南にある最寄りの村に行った。そこの墓場でネクロマンサーたちを見つけて捕まえた。それまではおぼえているが、何時この宿に戻ってきたのか思い出せない。部屋の机に向かって彼女は腰かけていた。
「どうしましたかリサ?」
隣で本を読んでいた師匠が不思議そうに尋ねて来た。
「師匠、私たちどうしてカイナドに戻ってきたんでしたっけ?」
なんとも間抜けな質問だが、師匠は優しく微笑んだ。
「どうしてって、私たちはネクロマンサーを捕まえた事をギルドに報告したではありませんか」
そう、リサたちはネクロマンサーと戦って、その内の1人を捕縛して残った死体は……確か村の近くに処分する場所があって……。
そこで記憶が繋がらない。どこで処分して、そこからどうやってカイナドに戻ってきたか、記憶がすっぽ抜けている。
「魔法を使って激しい戦いでしたからね。疲れたのでしょう」
師匠がそう言って労わる様に撫でる。
「でもこれできっとあなたは魔法使いギルドで正式に認可される。よくやりましたよリサ」
そうだ、ネクロマンサーは捕まえたのだから、これで魔法使いギルドに入れる。重要なのはその事実だけだ。
「もし、まだ疲れが残っているなら早くベッドに入ったらいいでしょう。明日にはまたここを立ちますからね」
魔法使いギルドの支部があるもっと大きな都市に行かないとなのだ。その前にミックという少年には別れの挨拶をしたかったが、自分たちにはそんな時間の余裕はない。
「はい、まだ少し疲れているみたいなので私は先に眠らせていただきます」
「お休みリサ、いい夢を」
やはりまだ疲れている。立ちあがると身体が重い。相当疲れが溜まっているようだ。そのまま宿のベッドの上に倒れ込む。目を閉じると真っ暗になり、眠いはずなのに視覚以外の感覚だけが鋭くなって周囲の音が聞こえてくる。風の唸り、松明が燃える音……松明? そういえば部屋の中では松明は使われてなかったはずだ。窓からは陽の光が入っていた。まだ日は落ちてなかったはずなのに、どこで灯されていたのだろう?
そして、さっきは気づかなかったが、空気がどんよりと湿っていて、じめっとしている。雨でも降っているのだろうか?
気が付いた違和感を確かめようとしても、まぶたが上がらず眠気で意識が遠のいてゆく。
やがてリサは昏睡し、完全に意識を失った。




