58話
ミックたちが赴いたのはカイナドの東にある村。馬車でも一日以上かかる距離にあった。もっと近い場所もあったが、リサたちに出会ったらまたもめ事になると思ったので、少し距離のある方を選んだ。
「1人残して後は全部ぶっ殺せばいいんだ。オークやゴブリン相手にするより楽な依頼だぜ!」
「あの、出来れば人は生かしておいて欲しいんですが……」
ミックが一時的に組んだ戦士におずおずと話しかける。だが、相手はいきなりミックの首根っこを掴んだ。
「甘っちょろい事言ってんじゃねえぞ! 戦うのは俺たちなんだ! お前みたいなガキがいる事自体そもそも間違いなんだよ!」
「ちょっと、そのガキンチョはあたしの連れだよ。手を出したら許さないよ」
アンジーと戦士がにらみ合う。戦士は無言のまま手を離してミックを解放した。
「だったら、荷物持ちのガキの躾ぐらいちゃんとしておけ! ふん!」
戦士は悪態を吐くが、リーダーであるアンジーに歯向かう事はしなかった。もう一人の見張りをしている斥候にひそひそと話しかけた。
「大丈夫かい?」
「ごめんなさい。空気を乱してしまって……」
戦いになったらパーティ同士の連携が大事な事くらいは知っていたが、自分のせいでパーティが険悪になった事を謝罪した。
「こればっかしはあたしも保証は出来ないからね。どっちにもいい顔しないといけないなんて、やっぱりあたしはリーダーって柄じゃなさそうだよ」
ため息をつきながらアンジーは言った。やはり、人死にが出ないようにするには、自分で何とかしないといけない事を自覚した。
やがてパーティ内の空気は悪いまま、夜も更けて辺りは暗闇になった。暗い中でじっとしていると時間の感覚は分からなくなるが、一方で音や気配には鋭敏になる。カエルの鳴き声、自分たちの息遣いが聴き分けられそうなくらいはっきりと聴こえてくる。
「誰か来たぞ。しかも複数人」
声を潜めて斥候が呟く。ついに墓荒らしがやってきた。自分の心臓の音が聞こえるんじゃないかというくらい緊張が走る。
「よし、あたしとこいつが出る。斥候は弓で逃げるか距離を取る奴を狙って。ガキンチョはいつでも傷薬を出せる準備を」
アンジーが指示を出す。言われた通りミックは荷物を取り出して確認する。その間に、斥候は弓を構え、アンジーと戦士が奇襲をかけるべくゆっくりと影に近づく。
向こうは松明を2つ持っており、少なくともこちらと同じ4人かそれ以上いる事しか分からなかった。この中にネクロマンサーがる。ミックはごくりと息を飲んだ。




