51話
「死体を操るなんて、そんな冒涜的な事、絶対許されませんよ!」
「だから魔法ギルドでもネクロマンシーは禁忌として扱いを禁じている。でも、その禁忌を破って密かに研究する者は少なくないわ」
しかし、研究するには実際にその魔法を使い、使役するための素体が必要だ。死体という素体が。
「荒らされたのが貴族の墓なら埋葬品狙いの可能性が高いけれど、聞いた限りだとみんな共同墓地の庶民の墓だし、何より死体その物が盗まれている。十中八九ネクロマンサーが関わっていると見て間違いないだろうね」
「つまり今度の相手は魔物じゃなくて魔法使い、人間って事ですか……」
ゴブリンやオーガ、さらにはドラゴンとも戦った事はあるが、相手が悪党だろうが人間である事は初めての事だった。だが、リサはミックがそういう魔物たちと戦った経験がある事を知らない。
「魔物とは勝手が違うの。だから、私たちに譲りなさい。魔法使いの問題は魔法使いが処分する」
「どうしてそんなに拘るんです?」
「大方、このネクロマンサーを捕まえて、その褒美で魔法使いギルドに認めて貰おうって魂胆じゃないかい?」
リサはドキッとした。彼女は感情を隠すのが苦手なようだ。師匠がため息をついて説明する。
「そちらの方の言う通り、ネクロマンサーの捕縛はその貢献で魔法使いギルドから多大な評価を受けます。私はギルドの末端ですが、彼女は正式に魔法使いギルドの一員になりたくて、この墓荒らしを追っているのです」
「魔法を使える素質があれば、誰でも魔法使いギルドに入会できるんじゃないんですか?」
「酔ったジェーンがぼやいていたね。魔法使いギルドが求めているのは才能のある人間じゃなくて、金持ちの貴族の懐ばかりだって。庶民の出の魔法使いは、大抵独学で魔法をおぼえて冒険者ギルドで入会金を集めるんだ。それでも本当に入れるか分からない位、高い金額をね」
どうやら魔法使いギルドは冒険者ギルドとは違って、誰でもなれる物ではないようだ。
「魔法や知識その物は便利な事には変わりない。だから魔法使いギルドはほんのごく一部を除けば、素質のない貴族階級の坊ちゃんや嬢ちゃんばかりさ」
「例えギルドの一員の弟子だろうと、入会金が払えなければ高次の魔法を学ぶことが出来ない。しかし、例外があります」
「ギルドに多大な貢献をした場合、特例でギルドから入会を認めて貰えるんだろう?」
だから、リサは自分たちの手で墓荒らしを捕まえたいのだ。魔法使いギルドに入会するために。




