41話
アンジーの方はミックと別れたその日の内に、対ドラゴン用の装備を提供してくれたドワーフの鍛冶屋の所を訪れた。店に現れた彼女の顔を見るなり、ドワーフの鍛冶師もすべてを理解して思わず涙ぐんだ。
「アンジー……お前、本当にやったのか! ドラゴンを倒したのか!? ううう……」
「長い付き合いだけど、あんたの様な奴も感動して泣くことがあるんだね」
「違う! これはたまたま……仕事が忙しくて汗が目に入っただけだ! とにかく、本当によくやった!」
目をこすって無理やり平然を取り繕うドワーフに、アンジーはつい吹き出したが、流石にこれ以上からかうとへそを曲げると思ってやめておいた。
「装備は殆ど使っちゃったし、壊れた物もあるけど、剣は返しに来たよ。ドラゴンを倒した剣だ。きっと王侯貴族たちが欲しがるよ。これを鍛えたあんたもこれで有名人だ」
「それで上流階級や騎士からの仕事も増えるか。それがお前の恩返し、というわけか」
ドラゴンを倒すのに集めた装備は、とてもアンジーに払いきれる様な物ではなかった。だから、金貨の代わりに今後の鍛冶屋への将来を保証してやることにした。
「城がいくつか買えるような金額はあたしには到底払いきれないからね。それでチャラって事にしてくれないかい?」
「お前はこの後どうするんだ? 俺の店はきっと生涯困る事はないだろうが……」
「あたしは旅に出るよ。貴族の騎士や親衛隊のスカウトが来るだろうが、あたしにはそんな堅苦しい所は苦手だし、この腕で豪華な鎧は着れそうにないからね」
そう言って肘から先のない右腕を差し出した。
「だが、指南役とかそういうのは出来るだろう? なのに、在野で一冒険者として残るつもりか?」
「あたしにはそっちの方が気楽でいいや。そういう訳で、これからまだ寄る所があるんだ。剣だけ返して今日は行くよ」
そう言って、アンジーは鍛冶屋を出ようとすると、ドワーフが止めた。
「待て、これをもってけ」
アンジーが最初に渡した装備の前金だ。
「逸品の剣と、店の評判を上げてくれたからな。今じゃあ、その金もはした金だ。返してやるよ」
「これでも10年かけて集めた大金だよ」
「お前金もなくて今は手ぶらだろうが。それで、酒でも買って顔を見せてやれ。昔の仲間たちによ」
ドワーフはアンジーのやろうとしている事が分かっているようだ。
「ありがとうな」
そう言ってアンジーは鍛冶屋を出た。次に向かったのはかつての仲間の眠る町の霊園だ。途中寄り道をした後、彼女は霊園で2人の眠る墓を見つけた。




