39話
「これからどうするんです?」
冒険者ギルドを出てミックはアンジーに尋ねた。
「あたしは知り合いの鍛冶屋にまず顔を見せに行く。それで全部理解するだろうからね。そうしたら、今度は霊園に埋葬されている仲間に報告しに行くよ」
町の霊園に、彼女の過去の仲間たちが眠っている。仇を取ったことを伝えに行くのだろう。死者は喋らないが、きっと長い時間がかかるはずだ。10年分の思いと経過があるのだから。
「それよりガキンチョ、あんたも教会に戻らなきゃだろう? きっと神父の奴、かなり怒ってるだろうからな」
ミックは神父様には内緒で出てきている。戻ったらきっと長い長い説教が待っているだろう。彼にとってこの後待っている神父の説教の方がドラゴンより恐ろしかった。
「うう……怖いなあ」
「だけど、あんたのお陰で教会も孤児院もきっと安泰だよ。ドラゴンを倒す子供を輩出したなんて聞いたら、貴族たちも援助を惜しまないだろうさ」
それを聞いてミックは嬉しかった。それならば、今後孤児院も経営に苦しむ事もない。安心して孤児たちも生活を送る事が出来る。
「そして、あんたももう危険な事をしなくて済むんだ。そのためなら今日一日神父の奴に怒られる事くらい我慢するんだよ」
「冒険者をやる必要がなくなるのか……」
ミックも危険な冒険者の依頼を受けずに、安全な町で暮らしていける。それどころか、もしかしたら彼を養子に迎えたい貴族なんかも出てくるだろう。孤児から上流階級の仲間入りになる。それだけでもまさに伝説として語り継がれる物になるだろう。
なのに、ミックは少し寂しさを感じた。孤児たちも自分も将来安寧して暮らせるかもしれないのに、何故か心の底から喜べない。孤児たちが生活に困らない事は素直に嬉しい。けれど、自分が冒険者をやめる事は……。
「全てが終わったらアンジーさんはどうするつもりですか?」
「あたし? きっとここに残ったら、騎士団とかの勧誘がうるさいだろうから、旅に出ようかな。外の世界を見て回るのも悪くはないね」
「それなら僕も……!」
「何言ってんだい! あんたには帰る場所も待ってる人もいるじゃないか! そいつらの事を悲しませるのは許さないよ!」
真剣な顔で彼女はミックを窘める。そうだ、ミックは本来ならまだ庇護を受けるべき子供なのだ。アンジーの様な根無し草とは違い、一緒にいるべき人々が存在する。
「あたしの事はきっと旅の語り部や吟遊詩人から話を聞けるし、なんだったら手紙を送るからさ。だから、あんたは元の生活に帰りな」




