33話
「まったく、年の割に賢いと思ってたけれどこんな馬鹿とパーティを組んじゃってたなんてね……」
アンジーは呆れたように呟く。どうやら、ミックの言葉に根負けしたようだ。
「馬鹿なのはアンジーさんでしょ! 1人よりも2人の方が絶対勝てる確率上がりますから! それに、僕の魔法はアンジーさんにとっても役に立つから、僕とパーティを組んでくれたんでしょ!」
「分かった分かった! 奴の所まで2人で行くよ。ただし、道中の魔物相手に傷を負う様な事があったら、すぐに町に戻って貰うからね!」
2人はドラゴン討伐に向けて北の山を目指す事にした。道中、アンジーはミックに、ドラゴンと戦う際の作戦を説明した。
「それで、本当に勝てるでしょうか?」
「用意した道具で出来るのはその作戦が一番だね。そこに、あんたの魔法でサポートしてもらう。分かったかい?」
「分かりました。僕は魔法で、アンジーさんのサポートを精いっぱい頑張ります!」
ミックが張り切って声を出す。元々アンジーが1人で戦うための作戦を、彼の魔法で成功率を上げるという計画になった。後は実際にドラゴンと戦って、全ては結果次第だった。
北の山の麓、かつて集落があった空間がある。ここがかつてミックの故郷の村だったのだろう。ミックが僅かな記憶を頼りに、ここにあった村の様子を思い描く。両親の顔が僅かに記憶の片隅にあった。その2人が自分を愛おしそうに見つめている。その両親も今はもういない。
「気を付けな、魔物が来るよ」
ミックは気づくと、ゴブリンの群れが数匹こちらに向かって、牙を剥き出しながら襲い掛かってくる。普段であれば先に気づかれても、警戒してゆっくり近づいてくるか奇襲をかけようと物陰に隠れるかするのに、まるで飢えた獣の様によだれを垂らしながら我を忘れて一直線に向かってくる。
ドラゴンの影響で魔物が凶暴化するというのは本当らしい。
「来るよ。こうなったら一撃で即死させないと、腕が無くなろうが足が切れようが痛みを感じないように襲ってくるからね!」
アンジーが武器を取り出した。普段の幅広の大剣と違い、細身で刀身が蛇のようにうねった奇妙な長剣だった。これも対ドラゴン戦に用意した装備の一つなのだろう。
飛び掛かってきたゴブリンを、まるでかまいたちの様に素早い斬撃で首を飛ばす。軽く鋭い切れ味の一品で、かつて呼ばれた疾風のアンジーを思い起こさせるような剣捌きだった。
ミックが手伝う間もなく、彼女一人でゴブリンの群れは一瞬にして全滅させた。しかし、魔物の唸り声が四方八方から聞こえてくる。
「こんな奴らに構ってる暇はない。一気に駆け抜けるよ!」
「は、はい!」
そう言って駆けだすアンジーの後をミックがついて行く。




