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29話

 鋭い牙が並ぶ口腔内をアンジーは見た。そかし、それも一瞬で剣はドラゴンの顎の力に敵わず、根元から折れてしまった。

「剣が!」

「アンジー!」

 ドラゴンの牙がそのまま彼女を襲う。噛み付かれたらほぼ即死だろう。反射的に盾を持った右手で攻撃を受け流そうとするが、勢いに負けて右腕の肘から先を喰いつかれた。

「あああ!」

 右腕が骨まで砕かれている激痛に耐えながら、彼女はせめて一撃を与えようと、携帯していた短剣を左手で掴み、ドラゴンの右目に突き刺した。

「ぐうう!」

 流石に目を貫かれたドラゴンは唸り声を上げる。それでも口を開かず、彼女の右腕に食らいついたまま暴れ出す。リーダーであるキングスは暴れるドラゴン相手に、加勢に入る事も出来なかった。アンジーは2度、3度と通用した右目への攻撃を繰り返す。

「ぐうう!」

 流石にドラゴンもこれ以上攻撃させまいと、頭部を思い切り振り回した。すると、喰いつかれていた右腕が耐えきれず、肘から先が引きちぎれた。その勢いで放り投げられたアンジーは地面に打ち付けられ転がされる。食いちぎられた右腕を抑えながら、意識が飛ぶのを必死で耐える。

「がああ!」

 右目を潰された怒りからか、ドラゴンは容赦なく地面に倒れているアンジーへ追撃を加えようとする。

「この、野郎!」

 アンジーがドラゴンに嚙みつかれていた間に、ワイマンが立ちあがっていた。重装備のお陰で尻尾の強烈な一撃にも耐える事が出来たが、ジェーンとアンジーがやられている状況を見て、無謀にもドラゴンへ1人特攻をかけた。

「うおおおお!」

 得物である槍を構えて、ドラゴンの背後から突撃する。左後ろ足の鎧のない裏の部分に深々と槍の穂先が突き刺さる。

「ぐああ!」

 しかし、ドラゴンは怯むどころかむしろ逆上し、ワイマンへ向き直った。

「来い、この大トカゲめ」

 挑発するワイマンに向かってドラゴンは口を大きく開いた。アンジーの様に再び噛み付くのかと思われたが違った。シュウウとドラゴンが息を吸う音が聞こえたかと思うと、激しい炎を口から放射した。

「うおお!?」

 大楯で防ぐが、ドラゴンの激しい火炎は大楯を赤熱化させ、その熱波は鎧兜に身を包んだワイマンへ容赦なく襲い掛かる。

「ワイマン!」

 キングスが叫ぶが、やがてワイマンは火炎を受けながら膝をつき、盾を構えたままうなだれるようにその場に屈みこんだ。ドラゴンの火炎放射が終わる頃には、大楯は半分ほど溶け、鎧は煤で真っ黒になり、まるで炭の塊のようになっていた。中のワイマンも無事ではないだろう。

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