27話
10年前、アンジーはこの辺りでは名前のよく知られた冒険者パーティを組んでいた。リーダー稲妻の戦士キングス、岩の騎士ワイマン、氷の魔法使いジェーン、そして小盾と剣で先陣を切る疾風の女戦士アンジー。彼らの強さはその地域のギルドでは一番のパーティと謳われ、オーガやトロールの様な巨大な魔物から、十数匹のハイオークの群れをたった4人で倒せるほどであった。キングスは自身が前線で戦うだけでなく、的確な指示を出せる優秀なリーダーであり、重装備のワイマンに守られたジェーンが強力な氷魔法で、相手を一網打尽にするという戦術を取っていた。アンジーは一番先鋒となり、敵の注意を引き受けて戦うという危険だが重要な役割をこなしていた。
冒険者から羨望のまなざしを向けられ、彼らは有頂天になっていた。そんな時に、ドラゴンが現れたという知らせを聞いた。
「ドラゴンを倒したら自分たちの名声は他の地域にも及ぶ」
「王族や貴族に召し抱えられ、自分も上流階級の仲間入りできる」
「ドラゴンを倒した英雄として、後世に語り継がれる」
思い思いの欲望が彼らをドラゴン討伐という偉業への挑戦へ向かわせた。自分たちの実力ならば、例えドラゴンと言えど勝てるのだとうぬぼれさせた。そして、彼らはギルドの制止を聞かず、北の山に現れたというドラゴンを討伐しに向かった。
なるほど、魔物が凶暴化するというのもその時実感した。普段なら油断している方が多いゴブリンでさえ、まるで何かに焚きつけられたように見つけた野生動物や自分たちに襲い掛かってくる。気が立っているなんて物ではなく、確実にドラゴンが現れた事による何らかの異変の影響だと分かった。
そして、彼らはついにドラゴンと対面した。山の山頂、まるで用意されていたかのように開けた場所で、そのドラゴンは悠然と存在していた。まるで挑戦者を待っていたかのように、堂々と山頂に着いたアンジーたち一行を見据えていた。ドラゴンの威厳がそうさせたのか、アンジーたちは一瞬美しい絵画や彫像を想像した。無学な冒険者たちには縁がない、美しさや自然への尊敬を感じさせるたたずまいだ。ハッと気づいてリーダーのキングスが指示を出す。
「アンジーは俺と同時攻撃! ワイマンとジェーンは魔法の準備!」
今までに感じた事のない、むしろ敬いや崇めたい欲求を呼び起こすドラゴンに、彼らは今までにない恐怖と緊張を感じた。アンジーは何時でも攻撃できるようにキングスに目配りしながら左右に分かれて攻撃のチャンスを待った。
ドラゴンも四本の脚で地面を踏みしめ臨戦態勢に入る。しかし、その気になれば先手を取る事も出来たはずなのに、こちらが攻撃態勢に入るのを待っていたかのようだ。




