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20話

 大通りの様子をアンジーが顔を覗かせて周囲を伺う。どうやら衛兵たちもそんなに自分たちを探していないようだ。恐らく彼女に突っかかったあの3人の男たちが、仲間内で喧嘩しただけだと見てるのかもしれない。ひとまずそれ程大事にはなって無いようだった。

「あの、すいません……魔法使っちゃって」

「ふん、あたしはね、あんたが魔法を使える事は隠して、自分だけで魔物を討伐していた様にしたかったんだよ。それなのにあんな人前で堂々と使いやがって……」

 彼女の真意をミックは初めて知った。ミックの転ばし魔法を利用していたという。

「あんたが前にいたパーティが、お前の魔法について話してるのを、ギルドにいた時にたまたま耳にしたんだよ。いたずらみたいな魔法が使えるが、使い物にならないってね。だけどあたしは閃いた。そんな魔法でも使い方によっては十分役に立つってね」

「でも、どうしてそんな……」

「あのごろつき共も言っていただろ。あたしは前にやらかして右腕を失った……本当はあいつらの言う通り、冒険者としてはこうなったらもう終わりも同然なんだよ。魔法も使えない、常にサポートが必要な隻腕の戦士なんてな」

 そう言って、肘から先のない右腕を差し出して見せた。一体何があってこんなひどい傷を負う事になったのか。

「調子に乗ってこの様だ。それでもまた冒険者としてやっていきたかったから、あんたを利用した。そういうこす狡い奴なんだよあたしはね。あんたがパーティを解雇された時、あたしはチャンスだと思った」

 ミックが独りになった後、彼をつけ狙ってその後をついて回っていたら、あのグリズリーベアとの遭遇が起きた。

「あんたの命を助けた恩を着せて、断れないようにしたんだ。そしてまんまとあんたはあたしとパーティを組んだ」

 自嘲するように彼女は笑った。

「全部あんたを利用するためだったのさ。オーガを倒した時も、ギルドの職員や他の冒険者共はあたしが1人の功績だと思っていただろうね。分かっただろう。全部自分の為だったのさ」

「どうしてそれを、今話したんですか?」

「さっきも言ったように他の奴にあんたの魔法がバレたら、あたしの功績が嘘だと分かってしまうし、あたしみたいにあんたの魔法の使い道を思いついた奴に取られてしまうかもしれないだろう?」

 ミックは実際動揺を隠しきれなかった。アンジーが自分とパーティを組んでくれたのは全て、彼女の思惑通りだった事、そして利用されていた事に。

「ああ、久々の酒でつい口が滑っちまったよ。もう宴はお開き。パーティも解散だ……」

 そう言って、彼女は一人で行ってしまった。一人残されたミックもとぼとぼと孤児院へ帰るしかなかった。いつも通り、孤児たちや神父は優しく出迎えてくれたが、いつもと府に気が違う事に気づいたのか、何があったのかは聞く事はしなかった。寝る時間になっても、他の皆が毛布にくるまってすやすやと眠る中、ミックはずっとアンジーの事を考えていた。

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