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19話

「やりやがったな! 叩きのめしてやる!」

 顔を真っ赤にして酒をかけられた冒険者がアンジーに向かって殴り掛かった。しかし、屈んでそれを避けた彼女はアッパーで冒険者の顎を強烈に打ち付けた。一撃で大きな身体が一瞬宙に浮いてそのまま背中から床の上に倒れる。他の冒険者たちも騒動に気づき、観戦しようと集まり出す。

「くそっこの女!」

「ちっ! 放せ!」

 仲間の男が彼女の背後に回って羽交い絞めにする。

「そのまま捕まえてろ!」

 もう一人の仲間が殴り掛かろうとするが、アンジーはそいつの腹に蹴りを入れてやると、みぞおちに入ったのかその場にうずくまった。

「ちょっと、いい加減に放しな!」

 羽交い絞めにしてる男はしつこく彼女を捕まえたまま放さない。最初に殴られたリーダー格の冒険者が、ようやく起き上がった。

「昔からその偉そうな態度が気に入らなかったんだ。だが、一人じゃ結局、その程度なんだよ!」

 冒険者がその腕を振りかぶってアンジーの顔に全力で殴り掛かった。

「転ばし!」

 ミックが叫んだ。すると、冒険者はそのままバランスを崩して彼女ではなく、羽交い絞めにしていた仲間の顔に強烈なパンチを食らわせた。

「あっ!」

 拘束が解かれたアンジーは、間違えて仲間を殴った冒険者に強烈な膝蹴りと肘打ちを食らわせる。この連撃には耐えられなかったようで、流石にリーダー格の冒険者の男も、床の上に伸びた。

「いえーい!」

 観戦していた他の冒険者たちが歓声を上げる。3人の男をのしたアンジーにミックが近づく。

「大丈夫ですか! お怪我はありませんか?」

 ミックは声をかけたが、そんな彼にアンジーは襟元を掴んで凄んだ。

「馬鹿! こんな周りに人がいる所で魔法なんか使いやがって!」

「で、でもそうしなかったらアンジーさんが怪我を……」

 助けたつもりなのに怒られてミックは動揺した。彼女は、ミックが魔法を使える事を他の冒険者に知られたくなかったようだ。

「騒がしいぞ! 何事だ!」

 町の衛兵がギルドになだれ込んできた。ギルド内での冒険者同士の争いはご法度。それに気づいてアンジーはミックから手を離した。

「マズい、窓から逃げるよ。捕まったら最悪ギルドから追放されてしまうからね。早く!」

 冒険者ギルドから追放されたら孤児院の皆を養えない。それよりも衛兵に捕まったりしたら神父様が本気で怒るだろう。観戦していた冒険者たちが壁になってる内に、慌てて二人は窓から冒険者ギルドを抜けて、衛兵から逃れるように狭い路地裏に隠れる事にした。

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