15話
稽古という名の指南を受けた後、2人はゴブリンの群れの討伐依頼を再開した。南の遺跡にほど近い森でまたゴブリンの群れが出たという物だ。
「教えた通りにガキンチョがちゃんと働けるか見ものだね」
森の中を探索しながらアンジーが呟く。今度はゴブリンに攻撃させずに彼女を守って見せるとミックは張り切った。
「しかし妙だね。静かすぎる……」
一方でアンジーが違和感を感じ取ったらしく、そんな事を呟く。ミックには特別異変の様な物は感じなかった。
「どういう事です?」
「ゴブリンの群れがいるなら、もうちょっと動物たちが騒いでたりしてもおかしくないはず。それなのに、鳥の鳴き声すら聞こえない」
改めてミックも耳を澄ましてみるが、風で木々が揺れる音で鳥の鳴き声まで聴き分ける事は出来なかった。やはりまだ経験が少ないせいかとミックは思った。
「ガキンチョ! 戦う準備をしな!」
いきなりアンジーが声を張り上げる。既に剣を構えて前方を警戒している。ミックも慌てて身構える。
始めはただ木々が揺れてる音だけだと思っていたが、徐々に枝が折れたり木々を揺さぶる様な音が聞こえ、こちらに近づいてくる。
「なんてこった。オーガだ」
「オーガ!」
周囲の木々に負けない程の巨体で、木々を無造作に掻き分けながら恐ろしい怪物が姿を現した。オーガは人型の魔物ではトップクラスに危険で凶悪な魔物だ。力も大きさもグリズリーベアの上を行く。
「ぶるる」
口元に小さな人の脚の様な物が見えた。最初は最悪の予想をしたが、どうやらそれはゴブリンの物らしく緑色をしていた。
「どうやら、小鬼どもはこいつのご馳走になったみたいだね。あいつらは相手が自分より強かろうがとにかく向かっていく性質だからね」
「逃げましょう! 空腹でないオーガなら急いで逃げれば、すぐ見逃してくれるはずです!」
オーガはこれまで会った魔物の中でも最も強い魔物だ。一撃でも攻撃を受ければ人間なんてひとたまりもない。
「何言ってんだい。こういう予想外な状況でも、乗り越えなきゃ冒険者なんてやっていけないよ!」
どうやらアンジーは戦うつもりらしい。ミックは今すぐにでも逃げ出したいほど怖かった。しかし、パーティの仲間を残して自分だけ逃げるなんてそんな事は出来ない。彼女は自分の仲間で、恩人なのだ。ミックは顔を叩いて自分を奮い立たせる。
「わ、わかりました……精一杯サポートします!」
「その意気だよ!」
ゴブリン退治から一転、巨大で凶暴なオーガを相手に戦う事になってしまった。




