13話
そして次の日もミックはアンジーと組んで魔物の討伐依頼を受けた。
「今回の討伐依頼はまたゴブリンの群れだ。でも、今日の討伐依頼はこれしかなかったから、依頼前に魔物との戦い方の稽古をつけてやろうかね」
町の外に出た後アンジーはそう言って、ミックに身構えるように言った。ミックは慌てて荷物を下ろそうとするが彼女はそれを止める。
「魔物は悠長に準備してくれる時間をくれないよ! 荷物は持ったまま、武器だけ構えな!」
「は、はい!」
言われた通りミックは荷物は背負ったまま、護身用の短剣を両手で持って構える。
「まあガキンチョに戦闘は期待していないけど、本当に素人なんだね。ゴブリンどころか大ネズミすら倒せるか怪しいじゃないか」
分かり切った事ではあるが、今更驚いたように彼女は言った。だからミックは前のパーティでも荷物持ちしかやってなかったのだ。直接自分が戦う戦闘経験は全くない子供、それがミックなのだ。
「まあ、あんたに求めてるのはそこじゃないから安心しな。その転ばし魔法とやらが大切なんだよ。昨日と同じでまた複数敵がいるけど、どう対処するかその手段を教えておこうと思ってね」
アンジーが指を振って挑発する。
「試しにあたしに魔法を使ってごらん」
「はい!」
指先をアンジーに向けて意識を集中する。
「転ばし!」
ミックが叫ぶと、アンジーの片足が見えない力で後方に引っ張り上げられたように動いた。
「おっとと」
一瞬バランスを崩したが、彼女は膝も付く事なく残った片足ですぐに体勢を立て直した。
「ふぅん、これがガキンチョの魔法ね……分かっていれば転ぶこともないけど、動いてる状態だとこの一瞬の隙が命取りになる……なるほどね」
アンジーは1人で思索した後、納得したように頷いた。
「これ、同じ奴に何度も使えないのかい?」
「使えますけど、指先と魔法をかける相手に意識を集中して思いっきり相手の脚を引っ張る様にしなきゃ使えないので、それほど連続で使えません」
アンジーが魔法について知っている限り、魔法使いならこれと同じくらいの速さで初歩的な攻撃魔法は使える。相手の動きを止めるにしても、少し時間をかけて詠唱すれば金縛り魔法で精神力のない魔物だったらまとめて完全に動きを止められる。やはりガキンチョは魔法使いとして見ても、役に立つとは言い難い。
だが、それだからこそミックと組む意味があった。地味であまり見かけないこの魔法を使わせながら魔物を倒しても、その勝利はアンジー自身の完全な実力だと誰もが思う。周囲にそう思わせる事がミックと組んだ大きな理由なのだ。
そんな下心があるとはミックも思っていなかった。報酬が貰えれば彼には名声や周囲の評価は必要ないと思っているからだ。冒険者にしてはその無欲さも彼女にとって、彼はまさに便利な存在だった。




